定年後は住宅ローンを支払い続けない

国土交通省の「令和3年度 住宅市場動向調査報告書」によると、分譲マンションの平均取得年齢は44.3歳、分譲戸建て住宅の場合は38.4歳となっています。

わかりやすいように、この2つの平均年齢のほぼ中間である42歳で住宅を取得したとして、話を進めさせてもらいます。

月々の返済額が最も少なくて済む35年ローンを組むと、完済年齢は77歳になります。

2021年に改正された高年齢者雇用安定法によって、70歳までの就業機会の確保が企業の努力義務になりましたが、ローンの完済年齢がその7年後というのは無謀な設定と言わざるを得ません。

住宅ローン破綻のイメージ
写真=iStock.com/takasuu
※写真はイメージです

なぜ、こうした設定をする人が多いかというと、「退職金で住宅ローンを完済する」という腹づもりがあるからでしょう。

しかし、その退職金は減り続けているようです。

そもそも民間企業の退職金の額は、法律で定められているものではありません。経営者の一存や会社の経営状態で増減できるものです。経営が絶好調だったバブル時代と比べると、現在はほとんどの企業で大幅に減っています。

ちなみに厚生労働省の「就労条件総合調査」(令和4年)によると、大卒・大学院卒者が受け取った定年退職金額は、2007年には平均2491万円でしたが、2022年には平均2037万円に激減。つまり、15年間で400万円以上も減ってしまったのです。

その結果、予想していたほど退職金を受け取れず、住宅ローンが払いきれなくなったというケースが増えています。「下流老人」や「老後破産」が増えている原因の多くも、ここにあるといわれています。

では、下流老人になったり、老後破産に見舞われたりしないためには、どうしたらいいのでしょうか。

定年後は、住宅ローンを払い続けずに済むようにすることです。

ローンほど余計といえる荷物はありません。あなたがもし60歳前後なら、それが可能な最後のタイミングだと思います。

多くの企業が定年を65歳まで引き上げています。今後は70歳まで延長される可能性が高いでしょう。

生活費を削って繰り上げ返済

もし定年の延長が5年だったとしても、すでに子供が独立している可能性は高いでしょうし、若い頃と比べたら食費も減らせるはずです。

こうして生活費を削って繰り上げ返済をしていけば、退職金で住宅ローンを清算できる可能性が高くなります。少なくとも、定年後の返済額を大幅に減らせるはずです。

それでも厳しい場合は「リバースモーゲージ」という手段があります。

これは、金融機関や自治体が自宅を担保にしてお金を貸してくれる金融サービスです。条件はいろいろありますが、不動産評価額の最大7割程度のお金を借りられるため、たいていの場合、これで住宅ローンの完済が可能となります。

もちろん、リバースモーゲージも借金に変わりはありませんが、月に10万円だった返済額が3万円に圧縮できたという例もあります。これなら負担もずいぶん軽くなるはずです。