老後の生活に備え、お金を増やすための投資は有効な手段か。精神科医の保坂隆さんは「SNSなどで『退職金が3倍に増えた』などという自慢話を目にするようにすると、自分が損をしたと感じて、危険な投資に走りがちだ。しかし、人には『成功談は口にしたがるが、失敗談は伏せておく』という傾向があるため、SNSなどの情報を話半分以下とみなして読むことだ。例えば『○○万円儲けた』という書き込みがあったら、それを10倍にして『それまでに、○○○万円損しているのだな。投資というのは難しいのだな』と読み解くといい」という――。

※本稿は、保坂隆『楽しく賢くムダ知らず 「ひとり老後」のお金の知恵袋』(明日香出版社)の一部を再編集したものです。

封筒から出したお金と「#退職金」の文字
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株や為替などで儲けるたった1つの方法

「老後にいくら蓄えが必要か」が話題になって以来、投資を学ぶ教室やセミナーが盛況だそうです。参加者の多くはもちろんシニアで、その目的は「退職金を増やすこと」だとか。

でも、数回の教室やセミナーに参加しただけで、自己資金を増やせるものでしょうか。

それについて知人の経済評論家に聞いたところ、とても面白い答えが返ってきました。笑いながら、「自分より愚かな人を見つければ儲かりますよ」と言ったのです。

どういうことでしょうか。

聞きようによってはずいぶん失礼な話ですが、彼は取り繕うように「いや、誰もおとしめるつもりはないんです。じつは、経済理論のなかに『よりひどい愚者の理論』というものがあるのです」と付け加えました。

「株や為替などで儲けるためには、自分が買った値段よりも高く買ってくれる人がいなければなりません。こんな人を『自分よりもさらに愚かな人』とたとえているのです」

そして、こう続けます。

「そこで考えてほしいのが、今まで投資をしたことがないという人に、自分よりも愚かな人……というと語弊がありますね、自分より投資に関して知識が乏しい人を見つけることが可能だろうか、ということです。

私が見聞きしたところでは、投資を始めた人の9割以上が3年以内に大きな損失を出して戦線離脱していますから、やはり自分より愚かな人を見つけるのは難しいのだと思いますよ」