見苦しい取材にも理解を示したエンゼルス

こうした日本人記者たちの行動は何とも見苦しいが、一方でエンゼルスは、大谷の一挙手一投足が日本で報じられることの重要性も理解していた。フレッチャー記者は続けてこう書いている。

「日本のメディアとエンゼルスの関係性は、ときに緊迫することもあったが、全体的にはお互いのために協力できるところは協力し合っているように見える。

『日本全体が、彼のすべての動きを追っていることは理解しなければならない』

元エンゼルスの通信部門副社長だったティム・ミードが2018年に語った言葉だ。

『その需要に対して応える義務があり、その点は十分に承知していた――そして、ショウヘイも理解していた』

そして、大谷を追いかけ回す日本人記者の対応を担っていた広報担当者のマクナミーは、彼らに『ほかのエンゼルス選手たちの話を書くように勧め』ていたという。

『記者たちは一人の選手のためにここまで来ているわけだけど、私は少しでもほかのチーム一同や選手たちを日本の観衆に紹介しようとしていました』

大谷翔平の同僚たちはどう感じたか

日本人記者たちは、ほかの選手やコーチたちにも大谷のことを聞いてまわっていた。マクナミーは、エンゼルスの打撃コーチや投手コーチはもちろん、ブルペンキャッチャーさえも取材を手配したという。

スプリングトレーニングでは、無名のマイナーリーガーが日本人記者に囲まれて、練習場で大谷の投球を打ったかと質問攻めにされている始末だった」

プロスポーツの世界では、一部のスター選手に注目が集まるのは仕方のないことである。とはいえ「日本人記者に囲まれて、練習場で大谷の投球を打ったかと質問攻めにされている始末」だった無名のマイナーリーガーはいったい、どのように感じたのだろうか?

もしかすると「どんな理由であれ注目されてラッキー」と思ったかもしれないが、マイナーリーガーといえどもプロ野球選手、プライドもあるだろう。

取材を受けたにもかかわらず記者たちが自分に全く興味を持っていない、という状況は、あまり気持ちいいものではあるまい。僕が記者だったら、プロ野球選手に「ほかの選手」のことばかり質問するのは気が引ける。それは取材相手に対して失礼な行為だとすら感じてしまう。

カメラを向けるたくさんの報道陣
写真=iStock.com/suriya silsaksom
※写真はイメージです