※本稿は、プレジデントオンラインアカデミーの連載『経営を知ることは損をしないこと 会社経営で失敗しない!ひとり社長の完全節税術』の第1話を再編集したものです。
非・税理士が語る「これも経費になるよ」に騙されるな
わたしのクライアントとのミーティングでも、誤った経費の認識をもつ経営者はたくさんいます。「それ、どこで聞いたんですか?」と聞くと、「社長仲間に聞いた」、あるいは「ネットやSNSで社長が経費にできると言っていた」という答えが返ってきます。
でも、そういう情報は「一切信用しない」ようにしてほしいのです。では、誰の情報を信じたらいいのか? それはやはり、顧問税理士であり税務署です。
例えば、M&Aにおける課税など、複雑で解釈に幅のある事案では税理士も人によって考え方が異なりますが、一般的な中小企業の経費については、ほぼほぼ考え方は同じだと思います。ネットや書籍から学ぶにしても、ちゃんと税理士資格を持った人間の発信かどうかをチェックしましょう。
ここで疑問があります。経費に関するルールは一貫していて、定期的な税務調査もあるはずなのに、なぜその社長は誤った認識で「これも経費で落ちた」と言うのでしょうか。それには、以下の理由が考えられます。
❶たまたま税務調査が入らなかっただけ
法人の場合、黒字経営なら一般的に3年〜5年に1回は税務調査が入るといわれています。しかし、わたしのクライアントでも、黒字経営なのに10年以上も調査が入らない会社もあります。つまり、調査の頻度は絶対ではありません。誤った経費への計上を続けていながら、税務調査が入らず是正する機会がなかったのかもしれません。
❷金額が僅少なので指摘されずスルーされただけ
税務調査は入ったものの、調査官が不適切な経費の計上に気がつかなかった。あるいは、金額が小さいのでスルーされ、認識の誤りに気がつく機会を失っている場合もあります。
❸実は顧問税理士が経費から外していた
顧問税理士と契約していれば、微妙な経費算入をしていた場合、顧問税理士のほうで先に外してしまうのはよくあることです。ただ、それを税理士がちゃんと社長に確認しないケースがなくもありません。もちろん通常は、「これは何に使った領収書ですか?」と確認を取ります。
❹ある業界では経費になるが、一般的には経費にならない
「経費にできるよ」と言った社長の業界、あるいは業務内容では例外的に経費にできるだけだったケースです。例えば、社長がオフィスに自分用のトレーニングマシンを買ったとしても、それは家事費(個人の消費)であって経費になりません。しかし、筋肉や筋トレに関連する業種など、社長のトレーニングが仕事と密接に関連しているのなら、経費にできる可能性があります。