若い選手には「私のような思いをしてほしくない」

刀折れ、矢が尽きても、まだ幡野はファイティングポーズを取り、戦おうとしている。2023年、プロテストに敗れた翌日から、幡野は練習を再開した。

「一番言いたいことは、これから出てくる若い選手たちが、私のような思いをしてほしくない、ということなんです。でも、今言っても仕方のないことなので、テストに合格して、それを発信したいです」

第1回記事の笹原優美は、自分のことを「ゴルフのプロ」と呼んだ。幡野はなんと名乗ってるのだろう。

「女子ゴルファー、ですかね……。自分が何者なんだ? と聞かれたときに、未だに何者でもないなというのがあります。そこを埋めたいですね。

私は、負の経験を積みすぎてしまっているけど、どうせダメなんだと思ってしまう自分の気持ちに勝ちたい。女子ゴルファーのままで終わるのは嫌なので。下剋上というか、反骨心ですね。このまま終わりたくないという気持ちが強いです」

幡野選手
筆者撮影

現在、幡野はエンジョイゴルフ福岡の高武こうたけ大輔コーチに師事を仰ぎ、スイング改造に取り組んでいる。疑問点を明快に答えてくれるという理論派である高武コーチのことを「この人でダメなら私は終わりです。私にとっての最後のコーチです」というほど信頼している。

よりコーチから指導を受けやすくするためという理由で、現在、幡野は福岡県に移住している。まず住むところから変えるのが、なんとも彼女らしい。傷ついた心を胸の内に隠しながら、今年も幡野はプロテスト合格のために、自分の全てを費やしている。(第3回につづく)

幡野 夏生(はたの・なつき)
1997年生まれ。高校在学中の2015年に韓国女子ツアー(KLPGA)でプロデビュー(※日本人選手初)。2018年の「フジサンケイクラシック」では予選会から勝ち上がり、本戦でホールインワンを達成した。2019年「富士通レディース」5位。
JLPGAプロテストは7回挑戦し最終予選に6回進出するものの、いずれも不合格。明るいプレースタイルに魅了されるファンは多い。神奈川県出身。
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