JLPGAティーチングプロの資格でQT(予選会)に挑戦し、2024年シーズンのツアーに参戦。日本女子プロで9位タイに入る活躍を見せた古家翔香選手。20代の貴重な3年間を費やしてまで、なぜプロに必須ではないティーチングプロ資格を取得したのか。プロテストに挑戦しながら、ツアーを戦った異色の選手に、ゴルフライターのコヤマカズヒロさんが迫った――。(第4回)
女子プロゴルファーの古家翔香選手
筆者撮影
女子プロゴルファーの古家翔香選手

プロテスト未合格のまま、メジャー大会でベスト10

2024年シーズン、古家翔香はステップ・アップ・ツアーを中心にツアーに参戦していた。

シーズンのハイライトは、9月に開催されたソニー日本女子プロゴルフ選手権だ。予選会を突破して出場し、9位タイと堂々のベスト10入りを果たした。

この試合はアジアナンバーワンを決めると銘打たれたメジャー大会であり、すべての女子プロにとって大きな目標となる。古家はそのフィールドに立った131人の中で唯一、その時点でプロテストに合格していない選手だった。

国内女子ツアー、JLPGAでは2020年からツアーに参戦できるのはプロテスト合格者のみという制度改定を行った。つまり、毎年行われる最終プロテストに合格していなければ、メジャー大会はもちろんツアーでの試合出場はできない。古家もその意味においては、トーナメントに出場する資格を持たない選手だった。

古家が使った“裏”ルートとは?

では、古家はどのように試合出場を果たしたのだろうか。その答えは、ティーチングプロ資格にある。古家は2023年にJLPGAのティーチングプロ資格を取得。その年の7月に行われたティーチングプロ競技会で1位となった。

この競技会の上位15人には、ツアーでの出場権を決めるQT(予選会)に出場する資格が付与されるという制度がある。古家はいわばこの“裏”ルートを活用して、2024年シーズンのツアーに参戦することができたのだ。

2020年の制度変更以降、プロテストに未合格ながら、ティーチングプロの資格でツアーに参戦して好成績をあげた古家のような選手はいなかった。

彼女の戦いぶりは、プロテスト合格を目指している多くの女子選手たちのなかに、その時点でも国内女子ツアーで十分に活躍できるレベルの選手がいるということを示している。プロテストのレベルが年々上がっていて、毎年20位タイという枠は狭すぎるという主張は以前からあったが、古家の活躍はそれを裏付けるものだった。

このユニークなキャリアで、彼女は小さくない注目を浴びることになり、また現行制度の在り方についても、改めて考えさせられる契機となった。

プロテスト合格前は、ティーチングプロ資格でツアーに参戦した古家選手。なぜ20代で指導者資格を取得したのだろうか
筆者撮影
プロテスト合格前は、ティーチングプロ資格でツアーに参戦した古家選手。なぜ20代で指導者資格を取得したのだろうか