プロテストに7回挑戦するも合格ラインを突破できず

幡野夏生は、本稿を書いている現在、JLPGA(日本女子プロゴルフ協会)プロテストに合格しておらず、現在はJLPGAツアーへの参戦ができる状況にない。

幡野がJLPGAのツアープロとして活躍したのは、TPD単年登録制度を活用した2018~2019年の2年間。川奈でのホールインワンの次の年、2019年には、レギュラーツアーを主戦場に戦い、最高位は富士通レディースでの5位。2部にあたるステップ・アップ・ツアーの「フンドーキンレディス」でも2位と健闘している。

プレー中の幡野選手
筆者撮影

ところが、JLPGAの制度改定に伴い、TPD単年登録が廃止され、2020年からはツアーに参戦できるのがプロテスト合格者のみとなった。それ以降、幡野の目標はツアーでさらなる活躍をすることではなく、プロテストに合格することになる。

高校を卒業してから現時点までで、幡野はプロテストに7回挑戦していて、そのうち6回は最終予選まで進出している。

これはプロテストを目指す女子選手としては、かなり優秀な戦歴ではある。競争が熾烈になっている現在のJLPGAプロテストでは、実績のある選手であっても簡単に最終予選までたどり着けないのが、今の現実だ。

しかし、何度も最終予選に進んでも、毎年の20位タイという合格ラインを境に、全く異なった扱いを受ける。連載第1回〈プロテスト不合格は11回…女子ゴルファー笹原優美がそれでも「私はゴルフのプロ」と断言する理由〉でも紹介したように、合格した人は○(マル)、不合格なら×(バツ)と線引きされる。いくら安定した成績を上げていても、合格しなければ、意味を成さない。

「テストに落ちてしまうと、その一年間取り組んできたことが、全て間違いになってしまう」と幡野は言う。何度、最終予選に進んでも、結局、何も掴んでいないという感覚のほうが強くなるのは無理もないことだ。

最も熾烈で、最も合格に近づいた2019年

幡野のキャリアにとって、最もターニングポイントだったのは2019年だろう。直前のレギュラーツアー、「富士通レディース」で単独5位に入り、調子は上々だった。シード選手たちとの戦いで上位に入り、自信にならないはずがない。それなりの充実感を持って、最終プロテストに臨んだ。

好調をキープしていた幡野は、2日目までで3位タイの順位で終えて、インタビューにも応じていた。「落ちても合格しても楽しい人生だと思って、ハッピーな感じでトップ合格を目指します」とコメントも滑らかで、自信をのぞかせていた。自身でもいけるという手応えがあっただろう。

笑顔を見せる幡野選手
筆者撮影
笑顔を見せる幡野選手。元気で明るいプレースタイルにはファンも多い

3日目に「76」と崩してしまったが、トータル「-1」の17位タイとまだ合格圏内。十分に巻き返せるチャンスはあった。後知恵になるが、合格ラインは1オーバーだったので、最終日2オーバー「74」でも合格できた。その時の幡野の実力であれば、決して高いハードルではなかったはずだった。