「家を持っていても、生活保護を受けられるのですか?」

「息子さんの老後に、もし貯蓄が足りなくなってしまった際は、生活保護を受給することもできます」

「家を持っていても、生活保護を受けられるのですか?」

「それは(その時の)ご自宅の売却価格によります(※長男が70歳になる30年後はすでに両親は他界し、自宅も70年近く経過し老朽化していると考えられる)。今のご自宅であれば、住み続けながら生活費に相当する程度の生活扶助は受けられると思います」

もちろん最初から生活保護ありきで考えてはいけませんが、自宅の売却価格が低い場合は、無理に自宅を売って資金を捻出するよりも、住み続ける方がメリットはあるのです。

【図表】今の自宅に住み続けた場合
※駅近の中古分譲マンションに住み替えず、現状の戸建て住宅に3人で暮らせば、長男が83歳のときに貯蓄が底を突く(同上)

「そうすると、今のままの生活を続けるのでよい、ということでしょうか?」

「息子さんが仕事をしてない状況が良いとは言えませんが、無理に状況を変えることが良いとも限りません。まずはご夫婦が地域での生活を楽しんでください。それが息子さんにも良い影響を与えるはずです。仕事、言い換えれば、社会生活もそこからがスタートではないでしょうか」

私から「今のままでよい」と言われ、夫婦は少し安心したようです。

現在、都心部の駅近のマンションやタワーマンションが人気で、価格が高騰しています。確かに利便性は良く、資産価値は下がりにくく、売りやすいとも言われていますが、価格が億単位のケースもあって購入するにはかなりの元手がかかります。当然のこと、リスクを伴います。

アクセスのいい中古物件への住み替えも同じでしょう。今回の夫婦のように、家庭のさまざまな事情を抱える場合は、将来的なマネープランを作って検討し、結果的に人気が衰えている郊外の住宅地に住み続けるほうが、メリットがある場合も少なくありません。不動産価格上昇といった報道に迷わされず、何が家族全員の幸せにつながるのかということを熟慮することが大事でしょう。

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