不安と恐れを煽り、独裁を正当化する
1月30日配信の「プレジデントオンライン」の記事でも説明したように、トランプ氏の高い支持率は「自国ファースト」「強権的な政治姿勢」「反ポリコレ」などの政治姿勢、政治手法が国民に歓迎されている面がある。“強くて本音のトランプ”に熱狂する支持層は確実にいるだろう。強権的な政治が意外なほど支持を集めることは、プーチン大統領の得票率を見てもわかる。
TBSのドラマ「不適切にもほどがある!」(金曜22時)の視聴率が高いのも、ポリコレという現代のテーマを扱っているためかもしれない。テレビドラマで“あけすけな本音”や“昭和の感覚”を面白がるのはいいが、現実の政治で強権的な政治や反ポリコレが強く支持されるのはおそろしいことだ。
強くて本音の政治家はたしかにウケる。しかし本音だけでは社会が成り立たないから、法律やモラルといった制約があるのだ。
強くて本音の政治家は、筆者がコーチングで学んだ考え方から見ると、人間の潜在意識にある「安全安心の欲求」を刺激している。プーチン氏が「欧米との戦い」を強調するように、不安や恐れを煽って自分の強権的な政治手法を受け入れさせるからだ。人種や性的少数者などへの差別も同様だろう。不安が高まれば、国民は強いリーダーを求め、多少の抑圧にも耐える。
たしかに独裁的、権威主義的な政治手法には魅力、魔力があって、世界的に独裁の魔力が伝染しているようにも見える。しかし、独裁者の多くが最後に暴走し、破滅していくことは過去の歴史が証明している。自分に諫言する人間を近くに置かないことも理由の1つだ。
独裁者の末路は、企業の経営者にも教訓を与えてくれる。まずは独裁の魔力を警戒して、部下の諫言に耳を傾けるところからはじめてはどうだろうか。
(構成=伊田欣司)