世界中の経済専門家が耳を疑った
3月9日、中国の倪虹住宅都市農村建設相は、債務超過に陥った不動産企業について「破産すべきものは破産し、債務再編すべきものは再編すべき」と発言した。この発言に対し、多くの経済専門家が疑問を呈している。これまでの中国政権の政策とまったく逆の発言だったからだ。
中国政府は、碧桂園控股(カントリー・ガーデン・ホールディングス)など事実上の経営破綻状態にある不動産デベロッパーの延命を優先してきた。不動産デベロッパーに対して、既存の建設案件を完成させることを要請してきたからだ。
そのため、大手行に対して不動産向けの融資を増やすよう要請を強めた。2月、政府は金融支援を行う不動産事業を記載した“ホワイトリスト”も策定し、大手国有銀行5行は関連案件の融資申請を受理した。
共産党と政府内の意思統一ができていない?
それを、デベロッパーを破産させるという住宅相発言は、あまりに唐突でよく理解できない。「共産党と政府内の意思統一ができていない」との見方も出ている。
今なお、中国の住宅市況は悪化が止まらない。不良債権問題を抱える企業を支援したにもかかわらず、一方で延命させると言い、他方で破産させるという。今後、どのように中国の不動産市況悪化は収束するか、落としどころは一段と見出しづらくなった。
1990年初頭にバブルが崩壊したわが国は、一時期、債務問題が深刻化した企業への貸し出し促進策を強化した。それでも、不良債権問題、金融システム不安、デフレ環境の深刻化は止められなかった。今回の中国の政策運営方針の不一致で、経済が正常な環境に戻るにはさらに時間が必要になるだろう。