経済制裁でも、1年でマイナス成長を克服

ロシア経済が持ち直したことも、プーチン支持が揺るがない理由の1つだろう。アメリカを中心にG7、EU、オーストラリアなどが経済・金融制裁をつづけてきたにもかかわらず、2023年の実質GDPはプラス3.6%だった。ウクライナ侵攻がはじまった2022年はマイナス1.2%だから、1年でマイナス成長を克服したことになる。

経済制裁が効いてない一方で、EUの盟主であり、ロシアからのエネルギー輸入を見合わせているドイツがマイナス成長だから、ロシア経済の堅調さが目立つ。

ロシア経済の回復は、戦争継続による軍事関連需要の高まりが最大の理由と見られている。また、原油の輸出先は中国、インド、トルコなどの“友好国”にシフトし、非ドル取引の拡大によってロシア貿易は安定的に継続されている。

風にはためくロシア国旗
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ただし、強い軍需によって経済が過熱し、深刻な人手不足とインフレ率7%台の物価高を招いて、国民生活を圧迫していることも事実だ。

プーチン氏は選挙の2週間前(2月29日)に「年次教書演説」で内政や外交の基本方針を示した。彼の演説は2時間を超え、国民の大多数がウクライナ侵攻を支持していること、ウクライナで多くの領土を解放したことなどを強調した。

2時間もの演説で語った「欧米との戦い」

安全保障については、西側諸国がロシアを軍拡競争に引きずり込もうとしていると述べている。

また、2月26日にフランスのマクロン大統領が「欧米の部隊をウクライナに派遣する考えを排除しない」と述べたことを受け、ロシアには「彼らの領土を攻撃する能力がある」と語った。大陸間弾道ミサイル「サルマト」の実戦配備を進めていることにも触れている。サルマトは核弾頭を搭載できて、アメリカが射程に入るミサイルだ。

プーチン氏が年次教書演説で主張したのは、ウクライナ戦争の継続だけでなく、NATO加盟国をはじめとする欧米各国との戦いである。永続的につづく「欧米との戦い」は、ロシア国内の容赦ない粛清や弾圧、検閲など抑圧の根拠となる。

プーチン氏にとって、87%もの得票率で再選した今回の選挙は、国民が年次教書演説の内容を承認し、支持したことを意味するのだろう。ウクライナ戦争の終結後も「欧米との戦い」は継続されることになる。