2月16日、プーチン大統領の最大の政敵である反政権派指導者、ナワリヌイ氏が北極圏の刑務所で死亡した。筑波大学名誉教授の中村逸郎さんは「ロシア国民の多くが貧困と長引く戦争に強い不満を持っている。ナワリヌイ氏の死をきかっけに大規模な反政府運動が起きる可能性がある」という――。
反プーチンの活動家はなぜ死んだのか
ロシアでプーチン政権を批判する急先鋒の活動家アレクセーイ・ナヴァーリヌィー氏が今年2月16日、死亡した。収監されていたシベリア極北の刑務所での悲劇だった。この3年間、刑務所を転々と移動させられており、挙げ句の果てに今年1月、ロシア北極圏ヤマロ・ネネツ自治管区にある刑務所に送り込まれた。かれの体調や身の危険を心配する声が、半年前からロシア国内の支援団体や欧米諸国であがっていた。
死因をめぐってさまざまな臆測が飛び交っているが、ロシア政府系のメディアは刑務所の周辺を散歩しているときに意識を失って死亡したと報じている。血栓が死因だという。だが、前日に元気そうな表情を浮かべていたという話が出ている。
現在、ロシア諜報機関の関与が疑われるジャーナリストや野党活動家の毒殺や銃殺が、頻発している。じつはナヴァーリヌィー氏の悲報の直前、元ロシア兵マクシーム・クズミノーフ氏がスペインで銃殺された。身体には、12発の銃弾による傷が確認されている。
昨年8月にロシア軍のヘリコプターでウクライナへ亡命し、そのあとにスペインに入国した。恋人をスペインに呼び寄せた奇妙なタイミングで亡くなっており、幸せの絶頂から地獄に突き落とす残忍な手法だ。
ロシア対外諜報庁のナルイシキン長官はロシア国営タス通信に、「裏切り者の犯罪者が道徳的な死体となった」と報復を強く示唆した。