脳の2大システム「集中系」と「分散系」
直観を得るうえで必要なのは、意識の「集中」ではなく「分散」なのである。本稿では、直観に密接に関わっている脳の2大システム「集中系」と「分散系」について見ていこう。
広範な大脳皮質に蓄えられた意味記憶は、人生を重ねるにつれて増えていく。経験や知識は、その多くが失われることなく蓄積し、無意識の中で膨大なネットワークを作っている。
その全てを言葉として明確に、自在に取り出すことはできないが、このネットワークをうまく使って判断を行えば、過去の経験値を全て含んだ「バランスの取れた意思決定」ということになる。そして、何かの出来事、刺激をきっかけにしてこれまでとは違う記憶どうしがつながり、新たな意味合いを持って意識のもとに現れてきた時が、「創造」と言われる脳の働きである。
こういった脳の働き方を可能にするには、脳の広範な領域が有効に結びつく必要がある。どのようにして、そういった結びつきが可能になるのだろうか?
その大きなヒントを与えてくれるのが、「集中系」と「分散系」という脳の2大システムだ。
「ぼーっとしている時」に活性化するネットワーク
いろいろな課題をこなすうえで、意識を集中させている時に活性化するのが「集中系」の脳領域であり、前頭葉や頭頂葉の外側大脳皮質が中心となって活性化している。これは脳科学の専門用語では中央実行系ネットワークと呼ばれており、集中系ネットワークの中心となる。
しかし、fMRIを用いた研究で見出された最大のネットワークは、何か目的を持って活動している時に、常に抑制されている領域だったのである。「常に抑制されている」というのは実はすごいことで、脳は常に一体として働いているということの裏返しでもある。そして、集中系はその作業の種類によって働く脳部位が異なるが、分散系は常に同一領域が働いており、脳が一体として働くために重要な役割を演じていることになる。
つまり、脳は分散系を使うことによって広い範囲を有効に活用できるのである。さらに驚くべきことに、この部位は何もしていないでぼーっとしている時に活性化している領域と一致していたのである。この領域は、専門用語でデフォルトモード・ネットワークと呼ばれ、「分散系」の中心となる部位だ。