直観力の優れている人とは、どんな能力の持ち主なのか。千葉大学脳神経外科学元教授の岩立康男さんは、「多くの場合、脳はデータを読んで直接そこから決める、という形では働かない。実は言葉にできない新旧さまざまな記憶と新たに得られた情報(データ)をつなぎ合わせて、無意識の中で思考して判断している」という――。

※本稿は、岩立康男『直観脳』(朝日新書)の一部を再編集したものです。

想像力、インスピレーション、アイデア
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「直観」とはそもそも何なのか

新しい研究を始める時、あるいは商品開発や新しい事業に着手する時には、常にリスクを伴う。優れた研究成果や大きな収益につながる可能性もあるが、失敗すれば使ったお金は消えてなくなり、貴重な時間も無駄になってしまう。リーダーはその研究や事業を「やる」のか「やらない」のかを決めなくてはならない。

当然ながら、その新しい研究テーマや新事業に関するデータを集めることから始めるだろう。そもそも、それを行うことは可能なのか? 現時点ですでに似たようなことをしている人たちはいるのか? いたとしたらどんな状況にあるか? そして事業であれば収支はどのようになりそうか? などなど、さまざまなデータを集めさせて目の前に並べることになる。しかし当然ながら、それらのデータは全て過去のものであり、その研究や事業を行った先の未来がどうなるかは、誰にもわからない。もちろん、決める人にとっても。

それでは、どのようにして決めているのか? さまざまな過去のデータを眺めながら思い悩んだ末に、「これはいける」「これは面白い」あるいは「それはダメだ」などの思いが自然と湧き上がってきて決めているのではないだろうか。

その時、実はあなたの脳内では「直観」と呼ぶべきものが働いているはずだ。ここで言う「直観」とは自分の経験知や知識によってもたらされるものを指していて、感覚によって瞬時に判断する場合に使う「直感」とは違うものであることを注意してほしい。