寝ても覚めても不安が消えない時は、どうすればいいのか。『あやうく、未来に不幸にされるとこだった』(東洋経済新報社)より一部を紹介する――。
夜、ベッドに横になりスマホを見ている男性
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「悪い予測のほとんどはハズれる」という事実

未来を心配するのは、無意味で愚かしいことです。

何の利益もなく、自分の心を苦しめるだけだと言い切れます。実際、「未来への不安はほぼ現実化しない」という研究結果も出ています。2020年にペンシルバニア州立大学で実施された研究(※)に、大変面白いものがあります。

29人の参加者にそれぞれ10日間にわたり、心に浮かんだ心配ごとを記録してもらい、それらに根拠があるかどうかを調べたそうです。結果、心配ごとのうち最も多かったのは「まったく根拠のない心配ごと」でした。

さらに「なんらかの根拠がある心配ごと」についても、30日間にわたって追跡調査をしたところ、その91.4%は実際には起こりませんでした。

この結果からわかるのは、「私たちが日々心を悩ます心配ごとは、かなり的外れで、ほとんど現実化しない」ということです。

心配ごとに取りつかれ不安にさいなまれている最中は、それがとてもリアルに感じられるものです。しかし、それはわき起こった不安が、そうさせているだけ。ですから「心配ごとの多くは無根拠で、悪い予測のほとんどはハズれる」という事実を知っておくと、うんとラクになります。

※ペンシルベニア州立大学の研究によると、不安障害の人の心配ごとの91.4%は当たらないことがわかりました。心配が当たらない確率が高い人ほど、不安を改善しやすいそうです。つまり、不安を消し去るには、心配が的外れであることを実感することが大切なわけです。〔La Freniere, L. S.,& Newman, M.G.(2020).“Exposing worry’s deceit: Percentage of untrue worries in generalized anxiety disorder treatment.” Behavior Therapy, 51(3), 413-423.〕

でも、「残りの8.6%」がもし起きてしまったら?

そうは言っても、私たちの心は、「不安」からなかなか抜け出せません。

「心配が現実化するわずかな可能性」を、心は無意識に探し続けます。そして、私たちはそれをまるで「確実に起こること」であるかのように受け止めてしまいます。

そうなると、私たちは「到底起こりえないような不安」を、「確実な未来」だと信じ込み、おびえてしまいます。「取り越し苦労」で、人生を浪費してしまい、「いまを楽しみながら生きること」ができなくなるのです。これは、何とかしなければなりません。

先ほどお話ししたように、「不安」の91.4%は無駄なわけですから、無視すればよいのですが、「心」にとってはそれはなかなか難しいこと。なぜかというと、心は不安にフォーカスしたがるからです。怖いとわかっているからこそ、ホラー映画を観てしまう。そんな経験はありませんか?

私たちの心は、不安があることに気づくと、それをじっと見続けてしまうのです。実際、いま、あなたは「残りの8.6%」が気になっているはず。

「すべての心配ごとのうち、91.4%は無視してよい」と言われ、気持ちがラクになったはずなのに、今度は「残りの8.6%」が自分に当てはまるのではないか、と心配なのですよね。よくわかります。私もそうでした。