一流は脳をどのように使っているか。脳内科医の加藤俊徳さんは「世の中で成果を上げ、活躍している人ほど、『自分との対話』が上手にできる。イチロー選手は、自分の調子がいいときのバッティングフォームを覚えていて、つねに今の自分がそのときとズレていないかをチェックしていた。おそらく大谷選手も同様だ。自分の中に答えと真実があるわけだから、当然と言えば当然だが、一流は声にこそ出さずとも、頭の中でひとり言をつぶやいている」という――。(第3回/全3回)

※本稿は、加藤俊徳『なぜうまくいく人は「ひとり言」が多いのか?』(クロスメディア・パブリッシング)の一部を再編集したものです。

野球選手がボールを持つイメージ
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すべての答えは自分の脳の中に眠っている

禅の言葉に「回光返照えこうへんしょう」という言葉があります。

回光とは光を戻すという意味です。そして光とは仏性のこと。返照とは光を当てて照らすということです。

つまり仏性はもともと自分の中にあるのだから、自分に戻って自分自身を照らしてみなさいということです。

禅ではすべての大切なこと、すなわち仏性は本来自分の中にあると説きます。

ですから、外側に真理を求めるのではなく、自らの内側に真理を求めなさいということです。

この考え方は、まさに私の脳に対する考え方と同じです。

じつは脳には、さまざまな知恵や力が眠っていて、それを掘り出してくるだけで、問題も悩みも解決できると考えています。自ら認識している以上に、あなたの脳は賢者なのです。

ところが、得てして人は、自分の内なる光に気がつかず、外側に答えを求めてしまいます。

必死になって情報を求め、そこに答えがないかどうかを探そうとします。

とくに現代のような超情報化社会になると、さまざまな情報が溢れていますから、ついついそれに流されてしまいます。

世の中の情報をうのみにすると、不安に苛まれがちです。

老後資金は2000万円以上ないといけない、これからは投資をしないと生き残れない、子どもはとにかくいい大学に入れないと将来苦労する……。

人々の不安をことさらに煽り、それによって利益を得ようと考える人たちがいます。それに乗せられて、いろんな商品や情報を購入してしまうのです。

外側に光を求めているうちは、いつまでたっても不安はなくなりません。

誰かに新たな不安の種をまかれてしまうと、それがすぐに大きく育ってしまいます。

今のような時代こそ、私たちは内なる光を探し出し、それによって自分自身を照らさなければなりません。

自分の中の光とは、あなた自身の脳みそだということです。

ひとり言はまさに自分の中の光を探し、それと向き合うための手段なのです。