「なぜ?」は過去思考、未来思考の本質は「何のため?」

トレンド思考とゼロベース思考は、過去思考と未来思考と言い換えることもできます。

過去思考は、いま起きている現象を「結果」ととらえて、その現象が起きた「原因」を探るところからスタートします。製造業では「なぜを5回繰り返せ」とよくいわれますが、あれはまさしく過去思考。「なぜ?」と過去を検証することが、過去思考の本質です。

しかし、この手法には弱点があります。一つは、時間とお金がかかることです。一度の仮説検証で最適な解を導き出せればいいのですが、現実は甘くなく、幾度となく仮説検証を繰り返すことになります。これはリソースに余裕があるからこそできるやり方であり、リソースが豊富でも繰り返すうちに疲弊していく恐れがあります。

もう一つ、仮説が事例的・経験的になりやすいというデメリットもあります。過去をさかのぼって原因を探るため、それを是正するための方法も、「このケースではこの方法が効果的だった」というように前例に引きずられやすいのです。このやり方だと、改善はできても、新しいものは生まれません。いわば「過去の再現化」です。

いま求められるのは、未来思考です。未来思考では、いま起きている現象を、ある「目的」を達成するための「手段」として位置づけます。目的は「何のため?」という問いかけによって明確化します。この質問を繰り返すと、いま取りかかろうとしていることの真の目的が明確になります。真の目的が明確になれば、理想形も見えてきます。

(※『ビジネススキル・イノベーション』第8章 未来のつくり方を考える(プレジデント社刊)より)

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