攻めを忘れず、守りの時代に対処する
戦後から現在まで、政府が目指してきた国づくりを年代ごとに整理すると、興味深い傾向が浮かび上がってきます。国づくりの方向性には、ある規則性があるのです。
終戦直後の1940年代、政府が目指していたのは「生きていくための安全・安心な国づくり」でした。これは守りの時代といえます。戦後の混乱から立ち直る1950年代は「便利で、住みやすい国づくり」、高度経済成長の真っただ中にある1960年代は「活発で発展的な経済活動が可能な国づくり」です。この20年は守りから攻めに変わる時代です。
次の20年も攻めの時代です。ただし、同じ攻めでも量から質への転換が起きます。1970年代は「生活にゆとりと豊かさを感じられる国づくり」、1980年代は「多様な生活や経済活動に対応できる国づくり」。これらは物量がピークに達して、精神的な豊かさに視点が移ってきたことを示しています。
長らく続いた攻めの時代も、バブルの崩壊で方向転換を余儀なくされました。1990年代は「環境に優しく、持続可能な国づくり」。2000年代は「高齢者が安心して暮らせる国づくり」。低成長を前提として、いかに現状をキープするかという守りの時代にふたたび突入したのです。
2010年代はどうでしょうか。
依然として守りの時代が続いています。しかし先の20年は質で社会を守っていたのに対して、現在は量で社会を守る時代にシフトしつつあります。ビジネスでいえば、新興国のメーカーに対して質で差別化を図ってきたが、いまや質のアドバンテージは小さくなり、コストや人員を削減して生き残りをかけるというところまで追い込まれています。