時間の質をコントロールする

私はメールを読むと、原則5秒以内に返信することにしています。返事が遅くなるほど余計な言い訳が必要になりますが、すぐに返信すれば、たいていは「了解」や「拝受」の一言で済みます。

ただし、内容を吟味したいメールに関しては別の取り扱いをします。返事を書く時間的余裕があっても、あえて本題には触れず、メールを受け取ったという旨だけを返信し、未読フォルダに戻すのです。

意図的に本題に触れずにおくのは、時間を置くことによって知的熟成が起きることを期待しているからです。メールを読んだあとに時間を置くと、仕事をしていないときにも問題意識が勝手に働いて、思考の材料を集めてくれます。その結果、まるで水蒸気が空中のチリを頼って水滴と化すように思考の結晶化が始まり、アイデアが創造されていきます。

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寝かせる時間とは知的熟成を待つ時間……

これが知的熟成です。

メールの返信以外の仕事でも当然、知的熟成は起こります。たとえば企画書やプレゼン資料をつくるなど、何かを考える仕事については、すべてあてはまるといっていい。

思考が必要な仕事をやりかけのまま、あるいはいったん完成させた状態で置いておくと、放置しているあいだも頭の片隅で思考が回り続けます。その結果、他の材料と結びついて新しいアイデアがひらめいたり、第三者的に観察することで間違いに気づいたりするのです。

私は知的熟成の時間を確保するため、3時間で終わる仕事は3日間、3日で終わる仕事は3週間、3週間で終わる仕事は3カ月の余裕を持ってスケジューリングします。

仮に3日間で終わる仕事に3週間の時間的余裕を持ってスケジューリングしても、2週間半は何もせず、最後の3日間で帳尻を合わせるようにしてバタバタと片づけるやり方では意味がありません。思考が熟成するための時間がないからです。