マルチタスクでアイデアを熟成させる

知的熟成を起こすためには、通常の5~10倍の時間が必要です。ただ、3日間で終わる仕事に3週間かけていると、まわりから「仕事が遅い」、「中断して放置するな。最後までやれ」と言われかねません。そこでおすすめしたいのが、マルチタスクによるスケジューリングです。

目の前にA、B、Cの3つの仕事があるとします。これらの仕事を一つずつ完成させてから次の仕事に移るやり方は、単線的なシングルタスクです。

シングルタスクでは、まず仕事Aを片づけ、次に仕事B、Cへと順番に処理していきます。それぞれの仕事を集中して行うので、まわりからは手を抜いているようには見えません。おそらく本人も、仕事を片づけるたびに小さな達成感を得ているでしょう。

しかし、このやり方では仕事を寝かせる時間がないために知的熟成は起こりません。表面的には良い仕事をしているように見えても、いずれクオリティは頭打ちになります。

では、マルチタスクでスケジューリングするとどうなるのか。

仕事A、B、Cを同時並行で動かすと、仕事Aを中断して寝かせている間に、仕事Bに手をつけることができます。仕事Bを中断して熟成させる時間が必要なら、新たに仕事Cに取りかかったり、仕事Aに戻って仕上げをしてもいい。いずれにしても他の仕事にスイッチすることで、仕事を熟成させる時間を確保することが可能になります。

寝かせる時間を確保できるのに、全体の稼働率が落ちない点もマルチタスクのメリットです。

仕事A、B、Cを終わらせるのに、それぞれ3時間が必要だとします。シングルタスクなら、仕事A:3時間+仕事B:3時間+仕事C:3時間で、計9時間です。

一方、マルチタスクの場合は、仕事A:1時間+仕事B:1時間+仕事C:1時間+仕事A:1時間+仕事B:1時間……、と時間が細切れになるだけで、合計時間は9時間のまま。つまり3つの仕事を9時間で終わらせる効率性を維持したまま、仕事のクオリティを高めることができるのです。

『ビジネススキル・イノベーション』第1章 1.4倍で時間を見積もる(プレジデント社刊)より

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