ストレスを感じることは「心の筋トレ」になる
ストレスから逃げ続けているだけでは、いつまで経っても耐性はつきません。ワクチン接種と一緒で、弱い形でのストレス経験をしておくと、その後のもっと強いストレスにも耐えられるようになります。
人生においては、いろいろと失敗しておいたほうが、失敗にも慣れてきて、そんなに気分がへこまなくなります。若いうちにはどんどん失敗したほうがいいのです。
スポーツ選手は、あえて苦しいトレーニングをし、負荷の高い運動をすることで、筋肉の繊維を破壊します。わざと身体に悪いことをするのです。
ですが、いったん破壊された筋肉の組織は、再生するときに、破壊される前の状態よりもさらに強く再生されるのです。元の筋肉よりも強くなるので、この現象は「超回復」と呼ばれています。
ほどほどのストレスを経験しておくことは、筋肉を太くするのと同じようなことです。小さなストレスをいくつも乗り越えるうちに、大きなストレスに対しても蚊に刺されたくらいにしか感じなくなります。
ストレスを感じずに一生ずっと生きていければいいのですが、現実にはそういうわけにはいきません。ですので、弱いストレスなら、どんどん経験することでむしろ自分のストレス耐性を高めたほうがいいのです。
事故に遭った患者「生きているだけでもよかった」
もし交通事故に遭って脊髄損傷になったら、読者のみなさんはどういう気持ちになるでしょうか。一生、車いす生活になることを想像するだけで、とても苦しそうで、とても悲しい思いをするだろうな、と思うのではないでしょうか。
ところが、現実に脊髄損傷になった人に聞いてみると、どうもそうではないことが明らかにされています。
米国コロラド州イングルウッドにあるクレイグ病院(神経リハビリテーションの専門施設)のケネス・ガーハートは、153名の救急病棟のナースや医療関係者に、もしあなたが脊髄損傷になったとしたら、「生きているだけでもよかった」と思うかどうか聞いてみました。
すると「生きていてよかったと思う」と答えた人は18%しかいませんでした。
ところが、実際に事故に遭った患者に同じことを聞くと、なんと92%が「生きているだけでよかった」と答えたのです。
事故に遭うことは不幸なことには違いありませんが、当事者はというと、そんなに落ち込んでばかりというわけではなく、むしろ「生きていてよかった」という喜びのほうを強く感じるものなのです。
不安や心配もそうで、不安に思っていることが実際に起きたとしても、「なんだ、こんなものか」と思うことのほうが現実には多いのです。