足並みをそろえることで効率が落ちていく
もう一つは、護送船団行政大好き、競争嫌いの体質だ。2021年の秋以降に、コロナワクチンの第3回接種を6カ月間隔で行おうとしたが、8カ月間隔でないとできないという自治体の反対で、8カ月間隔に落ち着いた。
6カ月間隔の自治体がある中で、8カ月間隔でしかできない自治体があれば、そういう自治体は住民に批判される。だから、それは嫌だという。自治体間の競争で行政効率が上がるのに、あえて自治体の足並みをそろえさせる厚労省の競争嫌い、護送船団行政大好きの体質がある。
これがありとあらゆるところにある。競争がなければ、全体の効率は低下するだけだ。これでは賃金は上がらない。変化に反対するのではなく、変化を取り入れて進歩している国から学ばなくてはならない。
変化を生むにはリーダーを変えることも必要
『ザ・クラウン』(Netflix)という、エリザベス2世と戦後のイギリス史を描いたドラマがある。1967年のポンド切り下げ時の話だが、王室の廐舎の競走馬が昔はレースで優勝したのに、近年は成績が振るわないことをエリザベス女王が嘆く場面がある。それで女王はどうしたか。
フランスとアメリカの廐舎を訪ね、彼らが科学的方法で競走馬を育成していることを知る。イギリスも学ばなければならない、といって旧態依然の廐舎のトップをすげ替え、新しいトップを任命する。海外の最新の方法を知った新しいリーダーが必要だと認識したのだ。
GAFAがないから日本はダメだ、といっても仕方がない。どうやってGAFAをつくったらいいか、誰も分からない。むしろGAFAのない国でも賃金が上がり、成長している事実を見て、そういう国がしていることをまじめに真似るべきだ。
故・エリザベス女王もそうしたのだ。成長するためには、生産性の上昇や競争の妨害を排除しなければいけない。これはGAFAを生むより簡単なはずだ。また競争の妨害がなくなれば、日本版GAFAも自然と生まれるかもしれない。変化を取り入れるには、リーダーを変えることも必要だ。