インフラや製造業も生産性が大きく低下

ところが前述のように、1997年から2017年にかけて、製造業全体で69.8、サービス業全体で48.7に低下している。すなわち、日本のアメリカに対する相対的な生産性は、製造業全体で4.0%(69.8/72.7-1)低下、サービス業で15.0%(48.7/57.3-1)低下、全体でも1割低下している。

日本のアメリカとの相対的な生産性は、追いつくどころか引き離されている。平均よりましなのは化学、建設、専門・科学技術・業務支援サービス、その他サービス、運輸・郵便、食料品、宿泊・飲食であり、平均以下は、一次金属・金属製品、汎用・生産用・業務用機械・電子・電気機械、金融・保険、輸送用機械、その他製造業、電気・ガス・水道、卸売・小売、不動産、石油・石炭、情報・通信、農林水産業である。

製造業でも低下し、情報・通信も大きく低下している。情報通信業での大きな低下は、たしかにGAFAの欠如が関係しているのだろう。また、アマゾンは小売だから、卸売・小売の低さにもGAFAが関係しているだろう。グローバル競争に負けて、かつグローバル競争と関わらないところでも生産性が低下している。

「保護農政」によってさらに生産性が低下

農業は、低い生産性がさらに低くなっている。

農家の高齢化、後継者の不在などによって、零細な農家が生産をやめるのに伴い、新たに農業に参入する人々が増えている。この動きを促進すれば、やる気のある農家に土地が集まり、規模の経済によって生産性が高まり、農業は産業として自立でき、発展できる。ところが、このような動きを押しとどめているのが、零細な農家の退出を食い止める保護農政である。このようなことをやめれば、日本農業の生産性は飛躍するだろう。

広大な畑と耕運機
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この中で、建設業のアメリカとの相対生産性が、1997年の58.1から2017年の79.4まで、20%ポイント以上も上昇しているのは心強い。日本生産性本部のレポートでは、この理由として「建設業において、労働生産性格差が20%ポイント超の大きな幅で縮小している。これはオリンピック等の建設需要によるこの時期特殊の要因が含まれている可能性がある」としている。

すなわち、需要が増加したから労働生産性が上昇した、というのだが、それだけでなく、建設業の人手不足に触発されたものがある、と私は解釈したい。人手不足で、省力化投資が進み、労働生産性が上がったのであろう。

具体的に考えてみても、鉄骨の組み立て、コンクリートの打設、建物の解体、現場の情報システムで大きな進展があった。建設業を別として、特定の分野で相対生産性が低下しているだけでなく、幅広い分野で低下している。これは、何か特定の分野で政策を打てば、あるいは特定の分野での誤った政策を正せば直るという話ではない。