自暴自棄にさせないことが治療の目的
【黒坂】確かに学習障害の息子も、小学2年生で作文や感想文を書くことが増えたあたりから、「僕はバカなんだ」といって落ち込むようになりました。
【高橋】中学校に上がるくらいになると、一言でいえば諦めてしまうんですね。なかには、引きこもりになったり、自分を傷つけたり、非行に走ったりする子も出てきます。ADHDの場合、犯罪率が一般の平均より高いというデータもあるようですが、衝動性が関係してくるのはごくわずかで、原因の大部分はそれまでの苦労の多い人生にあるんだと思うんです。
他人に理解してもらえない生活しづらさ、報われない努力、いじめなどが重なり、どうしようもなくなる。誰も助けてくれない。誰も自分の努力を見ていない。なぜ自分はこんなにダメなんだと。それが、引き金となるんです。
【黒坂】発達障害という一次障害から生じた二次障害で、自分や他人を傷つける可能性が生まれてしまうんですね。
【高橋】ですから、自己肯定感が下がらないようにすることが必要です。上げる必要はないんですよ。だって、子どもって本来はみんな、自己肯定感が高いから。発達障害があることが原因で、自己肯定感が下がり、二次障害、すなわち「自分なんてどうでもいい」という状態に陥ることを避けるのが治療の最大の目的です。その結果、普通に日常生活を送る、好きな仕事に就く、そして幸せな人生を手に入れる、ということになります。
【黒坂】二次障害につなげないことが、親の役割にもなりそうですね。