遊び心こそが、いつまでも心身を晴れやかで強く保つ

「年をとったから遊ばなくなるのではないわ。遊ばなくなるから年をとるのよ」

ヘレン・ヘイズは、こう言いました。

彼女は5歳で子役として華やかな舞台にデビューし、9歳でブロードウェイへ進出。大人になってからはアカデミー主演女優賞や助演女優賞、エミー賞、またグラミー賞も受賞した、「ブロードウェイのファーストレディー」の愛称を持つ大女優です。

しかしその人生を見れば、決して幸福なものであったとは思えないのです。

彼女の夫は60歳で死去し、娘も10代にしてポリオで亡くなっています。トップスターへの道をライバルたちと競い、欲望渦巻くシビアな映画界で常に大きなストレスにさらされているうえに、家族を早くに亡くしているのですから、悲しみのあまり心を病んでしまってもおかしくなかったでしょう。

それでも彼女自身が92歳まで、心身ともに健康でキャリアを積み重ねてこられた理由は、「遊び心」を失わなかったことが大きかった、ということでしょう。

これだけの苦難を乗り越えてきた彼女自身が、人生を振り返って分析したことですから、そこには、私たちにも参考にできる真理があるはずです。

若いときは、スポーツやゲーム、アニメ、マンガと、遊びそのものに対する意欲や情熱を燃やしているものです。さらに、「あえて不自由なバックパック旅行」にチャレンジしたり、「大変なことはわかっているけど起業」にチャレンジしたりする、人生の波乱万丈を楽しむ遊び心にもあふれています。

しかし年をとると思うように体は動かないし、人間関係も希薄になってきたし……ということで遊びに対しての意欲も、あえて逆境を楽しむ遊び心も薄れていきます。

それでも決して、遊び心を失ってはいけません。

遊び心こそが、いつまでも心身を晴れやかで強く保つための、妙薬になります。

プールサイドで背中合わせに踊る屈託のない笑顔の老夫婦
写真=iStock.com/skynesher
※写真はイメージです

ビル・ゲイツが人生後半で悟った「人生で2番目に大切」な意外なこと

マイクロソフトの創業者、ビル・ゲイツは、人生において大切なこととして、次の3つを挙げています。

第1は、「仕事を持つこと」。

第2が、「遊び心を持つこと」。

第3が、「忍耐」。

世界のトップ企業を起ち上げ、ビジネスに人生を捧げた経営者ですから、「仕事を持つこと」は何よりも大切だと考えるのは納得がいきます。さらには、成功を手にする過程で「忍耐」も本当に必要だったはずですから、この二つはよくわかります。

でも、この二つの間に割って入っているのが、まさに「遊び心を持つこと」です。

そこには、いったいどんな心理が込められているのでしょうか?

実はビル・ゲイツには、人生で大きく後悔していることがありました。それは、大学時代のすごし方です。

彼はハーバード大学に入学したのですが、当時からコンピューターにしか興味がありませんでした。新しいソフトを開発して起業することしか考えていなかったのです。そのため、コンピューター以外のことは勉強せずに、大学時代の貴重な時間のすべてを会社の起ち上げに費やし、そのまま大学を中退してしまったのです。

スポーツも満足にできなかったし、文学や哲学など、人生を豊かにしてくれる学問を十分に勉強することもしなかった。また、交友範囲も極めて狭く、自分の仕事に関係する人としか付き合わなかったようです。せっかく才能豊かな人々が周りに多くいたにもかかわらず、です。

50代になった2007年、ビル・ゲイツは、中退したハーバード大学の卒業式に、名誉学位を授与されるために出席しました。それでようやく、やり残したことを少しだけとり戻したと、喜びを表明しています。

とはいえ、失った時間は、もう返ってきません――。

ビル・ゲイツのこの「仕事一筋で来たことへの反省」は、どんなに成功しようが、ただ目指す目標を一目散に追いかけ、達成するだけでは、人生が満足のいくものにならないということを伝えています。