スウェーデンのある中学校が行った実験

ところで、現代人の身体のコンディションはそれほど悪いのでしょうか。残念なことにかなり悪いようです。

これはスウェーデンの例ですが、速足で10分以上歩けない人が過去25年で27%から46%に増えました。大人の半数近くが「健康が危ぶまれるほどコンディションが悪い状態」にあるのです。

では若者はどうでしょうか。若者も見込みは良くありません。WHO(世界保健機関)が推奨する毎日1時間以上の運動をしているのは11歳から17歳までの男子の22%、女子の15%だけです。

スウェーデン第2の都市ヨーテボリ郊外にあるイェッテスティエンス中学校は問題のある学校として有名で、2010年ごろには全教科落第せずに卒業する生徒は全体の3分の1しかいませんでした。

そこで校長は新しい対策を試すことにしました。週2回の体育の授業以外にも、生徒が毎日身体を動かせるように計画されました。体育の授業のない日には30分の運動の時間が組み込まれたのです。

子どもたちの精神状態が向上した

その30分間は最大心拍数の65~70%を目指しますが、競うわけではなく、結果を出さなければいけないというプレッシャーも与えませんでした。すると2年後、1教科も落第せずに卒業する生徒の数が倍近くに増えていました。

学校では当時他にも色々な対策を導入したので、運動量を増やしたことがどの程度成績に影響したのかははっきりしませんが、校長はこの「パルス(心拍数)・トレーニング」が生徒を最も強化したと感じたそうです。

さらに、この本のテーマにも興味深い結果があります。校長によれば、1番大きく変わったのは「生徒たちの精神状態」でした。前ほどストレスや不安を感じなくなり、自信もついたのです。

実験でも、心拍数の上がる運動は子供でも大人でも不安を抑えるのに効くという結果が出ています。特にPTSDにはよく効くとされています。

2020年に18件もの実験の結果をまとめたところ、「どんな種類であれ、運動がその人を不安から守る」ことがわかりました。つまり心拍数の上がる運動だけではなかったのです。