勉強をサボっている子どもにイライラしたときはどうすべきか。公認心理師の柳川由美子さんは「親のイライラや不安が伝わると、子どもはますますやる気を失う。一見ネガティブに見える行動の背景を考える『肯定的意図を探る』という心理学の手法を試してほしい」という――。
自宅で携帯電話を使用するティーンエイジャー
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「息子の中学受験が不安でたまらない」

「息子が自分で中学受験したいと言い出したのに、勉強しないんです。今のままでは合格できるのか不安で仕方ありません。最近は気持ちが不安定になってしまい、体調もすぐれなくて」

カウンセリングルームに入ってきた時は「朗らかでやさしそうなお母さん」という印象だったAさんでしたが、一転して険しい表情で語り始めました。彼女には中学生の長女、小学生の長男がいます。

相談があったのは長男が小6の夏でした。長男は学校見学がきっかけで「中学受験したい」と言い出し、小5から塾に通い始めたそうです。ところが、小6になってから勉強時間が増えるどころか、だらけている時間が増えたと言います。中2の長女も中学受験で私立中学に入学していますが、そんな心配は必要なかったこと。さらに中学受験は小4から塾に通う子が多い中、スタートが遅いことも不安な理由だということでした。

カウンセリングでは今、感じていることを自由に話してもらいます。Aさんからは受験勉強だけでなく、部屋の片づけができない、学校からの手紙を出さない、朝、起きてこない……など長男が「だらしない」「なまけている」というエピソードが続々と出てきました。

さらに「放っておくと、学校で叱られたり、困ったりするだろうから」と、ランドセルから手紙を探したり、部屋を片づけたりしているというAさんの過干渉な一面も見えてきました。特に朝は何度も起こさなければいけないため、毎朝ストレスを感じているということでした。

不安を抱えている人の「心」の傾向

カウンセリングでは最初に「エゴグラム」を実施します。これは「交流分析」という心理療法で使われる性格分析の手法で、自我状態を客観的に理解するのに役立ちます。

交流分析では、人の性格は思いやりや共感をつかさどる「親の心」、理性的に生きようとする「大人の心」、感情的な部分が強い「子どもの心」があり、この3つの割合の大きさによって性格が形作られていると考えられています。

さらに「親の心」「子どもの心」には下記の二面性があることから、最終的に性格は次の5つに分けられます。

親の心
・父親の心→自分にも他人にも厳しい
・母親の心→優しさや共感

大人の心

子どもの心
・自由な心→自由にふるまい、創造性に満ちている。だが自己欲求も強い
・順応な心→親の愛情や期待に応えようとする

不安を抱えている人は「母親の心」と子どもの「順応な心」が高い傾向にあり、実際、私のクライアントさんの8割がそうです。これ以上に深刻なのは「父親の心」と子どもの「順応な心」が高い人で、エゴグラムの結果、Aさんはまさにこのタイプ。2つの心が非常に高い一方で「母親の心」、子どもの「自由な心」は低いという結果でした。