子どものやる気を奪う「一言」

Aさんの話の中で「今日はよく勉強しているな、と思って飲み物を持って行ったら、スマホを見ていたのでイライラしてきつく叱ってしまった」というものがありました。スマホを見てばかり、ゲームばかりのお子さんにイライラした経験がある方は少なくないでしょう。怒らなかったとしても「そんなにゲームばかりしていて、合格できるの?」と感情的な言い方をしてしまったことはないでしょうか。これは親御さん自身、受験への不安が強く、不安から出る言葉を伝えてしまっているだけだったりします。

しかし、こうした親のイライラや不安は子どもにも伝わります。人間の脳には「ものまね脳」「共感脳」ともよばれる「ミラーニューロン」という神経細胞があり、他人の感情をまるで自分が感じているように認識してしまうからです。

そうなると自己肯定感、自己効力感が下がり、ますますやる気を失ってしまいます。私自身、心配性の母親に育てられました。親が「大丈夫なの?」と不安な態度で接してくると、自分もどんどんネガティブになってしまうものなのです。

こういう時、カウンセリングでは「肯定的意図を探る」という心理学の手法を使います。一見ネガティブに見える子どもの行動の裏にある意図を考える方法で、「その行動をすることで、子どもは何を得ているのか?」を考えてみるのです。

「スマホで何を見ているの? どんなところが面白いの?」

例えばスマホやゲームだったら、

・受験のプレッシャーがあり、息抜きにやっているのではないか。
・勉強を続けてストレスが溜まっていて、ストレス解消がしたいのではないか。
・お母さんが応援している気持ち、心配している気持ちも分かっているからこそ、隠れてやっているのではないか。

といったことが考えられます。こうやって考えられるようになると、子どもの表面的な行動にいちいち反応しないでいられるようになります。

さらに「どんなゲームをやっているの?」「スマホで何を見ているの? どんなところが面白いの?」と興味を持つなど、楽しいという気持ちに共感できるようにしていきます。共感をベースに関わると、子どもも親の気持ちに共感してくれることが多くなります。実際、無理にやめさせるよりも共感して一緒に楽しんだことで、子どもも満足できて自主的にやめられるようになったという例を聞いたことがあります(まるで「北風と太陽」ですね)。

スマートフォンを持つ親と娘
写真=iStock.com/miya227
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また、ゲームやスマホに関しては、自分の中の「スマホやゲームは毒だ」という決めつけや思い込みが前提になっていないか、問いかけてみることも必要です。それでもスマホやゲームに興味を持てないのであれば無理をする必要はありません。子どもと一緒に「ゲーム以外に肯定的意図を満たすものは他にもないか?」と一緒に考えてみるのもおすすめです。スマホより運動してほしいと思うのなら、運動したことを褒めたり、運動して気持ちよかったという感覚に共感したりしてあげましょう。