自分を肯定できなければ、相手を認められない
「父親の心」が高い人は自分に対して厳格なため、完璧主義の人が多く、相手に応えようともっと頑張ってしまいます。「~ねばならない」「~べき」などの考えが強く、自分の理想に当てはまらないとイライラし、そんな自分も嫌になってしまうのです。頑張りすぎた結果、うつになってしまうケースもあります。実際、Aさんは生活の中で細かな不満をたくさん抱えており、まわりの人に対して「本当は~するべきなのに」という表現が多いと感じました。
エゴグラムの結果を踏まえ、私は「今のご自身の状態を知り、どうなっていきたいですか?」と問いかけました。「イライラして子どもを怒ってしまう自分を変えたい。心に余裕を持って息子と接したい」とAさん。交流分析では“I’m OK”が出せなければ、“You’re OK”も出せないと考えられています。つまり、自分を肯定できなければ、相手を認めることもできないということです。Aさんは息子さんを大切に思っているからこそ悩んでいるのに、その息子さんにもOKを出せていない状態です。
また、Aさんは息子さんの行動に問題があると思っていますが、それはAさんが「不安」というフィルターを通して息子さんの行動を見ているからだと感じました。つまり、まず変わるべきは息子さんではなく、不安やストレスを抱えたAさんだということです。
自分自身を受容することは不安を軽くすることにもつながります。私はAさんに「自分にOKを出せないうちは、息子さんにもOKを出せませんよ。不安を軽くするためにも、まずは自分にOKを出せるようにしていきましょう」と話しました。
多くの親は「自分に原因がある」と気づいていない
Aさんに限らず、子どもに不安を抱えて相談に来る親御さんの多くが、自分自身に原因があることに気づいていません。でも、親が変われば子どもも変わるというのは、多くのクライアントさんを見て実感することです。
もちろん、親が子どもの将来を心配するのは自然なことで、幸せになってほしい、つらい思いをしてほしくないと思うからこそ、心配になって口うるさく言ってしまうのだと思います。そこで、カウンセリングではまず「子どもを大切に思うからこそ怒ってしまうんですよね」と「リフレーミング」することから始めます。リフレーミングとは物事を別の角度から見ることによって、自分の望む状態で見つめ直す心理学の思考法です。
特にAさんのように子どもを怒ってしまう自分を責めている場合、そのままでは「ネガティブ沼」へまっしぐらでしょう。まずは怒ってしまう自分を許し、子どもを大切に思う気持ちに寄り添い意識を向けた上で、そこから子どものために何ができるのか? と考えていくことが大切です。