政党助成制度の穴

95年、政党助成制度が始まった。政党に所属する衆議院議員及び参議院議員の数に基づく議員数割と、総選挙又は通常選挙における得票数に基づく得票数割。この2つの基準に応じて、政党に交付金を配るというものだ。私の知る限り、税金を原資に政党へ活動資金を助成している国はほかにない。日本独自の制度である。

政党助成制度には2つの問題点がある。まず、パーティーによる集金を禁止しなかったことである。もともと同制度は、政治家個人の資金管理団体へ企業献金することを禁止する代わりに作られたものだ。しかし、政治資金パーティーを禁止しなかったために、パーティー券購入という形で企業からの実質的な献金が続いたのだ。

政治資金パーティーはイカサマだらけだ。パーティー券は1枚2万円が相場で、企業はたいてい10枚セットで購入する。政治資金規正法では、1回で20万円を超える支払いを受けた場合に収支報告書への記載を義務づけている。10枚きっかり購入するのは、不記載の範囲内で最大限に買うためだ。

10枚購入した企業はどうするかというと、1人だけパーティーに送り込む。出席したことを議員側に知らせるために、名刺を置いて帰るのだ。

名刺を出す
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もちろんパーティーで飲食してから帰ってもよいが、内容には期待できない。食事はポテトチップスのようなおつまみだけ。量も少なく、とても1人2万円の会費には見合わない。最初の乾杯後には、もう何もなくなっている。

私も付き合いでパーティーには何度か出席したが、当日は会場となるホテルのレストランで事前に腹ごしらえをするのが常だった。そもそもパーティーの会場費は、ホテルから相場より安く提供されている。

コストを抑えたうえで、企業には出席しない人の分までパーティー券を買ってもらう。このようなイカサマで、政治家は利益を出しているのだ。

百歩譲って、パーティーの利益が真っ当に政治活動に使われるなら我慢できる。今回の一番の問題は、派閥から議員へのキックバック分が裏金化し、使途不明になっていることだ。表に出さないカネの使い道は、永田町の常識的に考えると2つ。選挙で票を取りまとめてもらうために買収するか、銀座の高級クラブなどで議員本人の「お楽しみ」に使うかである。現時点では、使い道についてまだ何も明らかになっておらず、今後の解明が待たれる。

今回の件と直接関係はないが、政党助成制度にはもう一つ問題がある。政治家におよそ相応しくない輩にも交付金が行き渡るという問題だ。

23年6月に暴力行為等処罰法違反などで逮捕されたガーシーこと東谷義和元参議院議員は、NHK党(現みんなでつくる党)から出馬して当選していた。ガーシー氏は典型的な泡沫候補で、事実当選後は一度も登院せずに除名された。そんな人物でも、同じような輩と徒党を組んで支持を集め、当選さえしてしまえば交付金を得られるのだ。