当面ヒト・モノ・カネの流出は止まらない

そうなると、若年層を中心により良い就職の機会、自由な生き方などを目指して海外に移住しようとする人は加速度的に増加する。海外移住の増加とともに、資金も海外に流れ出す。

資金流出は人民元の下落圧力を高め、社会心理を不安定化させるだろう。それを食い止めるために、中国政府は一度に外貨と交換できる金額を制限したり、“デジタル人民元”の普及を急いだりして社会と経済に対する統制を強化しようとするはずだ。

それに反発する人は、あの手この手を使って資金を海外に持ち出そうとする。そうした観測が高まると、主要海外投資家の一部が人民元の先安観を警戒し、本土の株や債券に対する売り圧力が強まるだろう。海外投資家の売りが急増し、“トリプル安(株安、債券安、通貨安)”が鮮明となる恐れもある。本土金融市場の不安定化は、下落基調にある不動産市況を下押しし、不良債権残高の増加要因にもなりうる。実体経済の下押し圧力も強まる。

今のところ、中国政府は大手銀行などに公的資金を注入し、不良債権処理を進める考えを明確に示していない。当面、中国からヒト・モノ・カネの流出は加速し、景気低迷の懸念も一段と高まるだろう。

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