海外に資産を持ち出し、移住するケースも
報告書によると、一定の投資を条件に永住を認める“ゴールデン・ビザ”制度を運営する国への移住を検討する中国人(含む香港)は増えた。主な地域として、欧州のマルタ、カリブ海のアンティグア・バーブーダなどを検討するケースが多いという。
中国人の富裕層は、いったん資産を海外に持ち出し、その上でより高い利得が期待できる国などに資産を分散しようとしていると考えられる。
マレーシア・ジョホール州で碧桂園控股(カントリー・ガーデン・ホールディングス)が進めた“フォレストシティ計画”と呼ばれる不動産プロジェクトでは、人民元でマンションなどが購入できた。それは、多くの中国人富裕層にとって、政府の監視を回避して海外に資産を持ち出し、国際分散投資を実行するための有効な手段の一つに映ったはずだ。
投資牽引型の経済運営に限界が来た
雇用など中国経済の先行き懸念は高まっている。その状況から逃れ、より多くの選択肢を確保するために海外に移り住む人は増えた。
何よりも大きいのは、不動産バブルの崩壊だ。リーマンショック後の中国では、マンション建設などの投資が増えた。それを支えに鉱工業生産や雇用機会は増えた。しかし、不動産バブル崩壊により投資牽引型の経済運営は限界だ。
足許、中国国内では不動産、地方政府傘下の“地方融資平台”と呼ばれる政府系企業、そうした企業に資金を融通した“シャドーバンク(影の銀行)”などの分野で不良債権問題が深刻である。高利回りの投資商品として需要を集めた“信託商品”の債務不履行懸念も高まった。
本来なら、中国政府は大手銀行などに公的資金を注入し、不良債権処理を進めなければならない。同時に、規制を緩和し、成長期待の高い半導体や人工知能などの分野にヒト・モノ・カネが再配分されやすい環境を整備する。
そうした経済政策が進めば、経済全体で成長期待が持ち直す可能性はある。EVや再生エネルギー利用に欠かせないバッテリー、サイバーセキュリティー技術、人工知能(AI)分野などで、中国企業などは世界トップレベルの特許件数を持つ。わが国以上に先端分野での成長志向は強いとの見方もある。