海外投資家は習近平主席に失望している
しかし、肝心の経済政策の立案は海外投資家の失望を買うものが続いている。カントリー・ガーデンの経営破綻リスクの上昇にもかかわらず、習政権は公的資金を用いた不良債権処理を進める姿勢を示していない。
また、習政権は過度な受験競争の抑制、愛国教育の強化、民間IT先端分野における企業家の締めつけ強化など、経済のダイナミズムを減殺するような政策も進めた。若年層を中心に雇用・所得環境は追加的に悪化した。
香港では、英国の統治時代に醸成された自由な社会風土も毀損された。2021年6月、中国政府に批判的な論調で知られた香港紙、“蘋果日報(アップル・デイリー)”は廃刊に追い込まれるなど、一国二制度体制は形骸化した。
ゼロコロナ政策は、中国の社会経済運営が、党指導部の意向によって急激に変化し、経済が急減速するリスクを世界に示した。よりよい就職先の確保、命の次に大切なお金の価値保全、自由な生き方の実現などをめざし、中国から海外に逃げだす人は急増中だ。
職にありつけない新卒学生が大量発生する
海外に事業拠点を移す企業の増加傾向も強まった。不動産バブル崩壊による需要減少の影響は大きい。生産年齢人口の減少により労働コストが上昇したため、中国の企業はコスト削減も急がなければならない。一方、海外に進出することが難しい企業の収益力は低下し、国内の“ゾンビ企業”は増加するだろう。
今後も、中国の雇用機会は減少せざるを得ない。懸念されるのは、雇用・所得環境の厳しさが高まる中でより多くの若者が労働市場に参入することだ。中国教育省は2024年度の大学・大学院卒業者数が1179万人になるとの見通しを公表した。新卒学生の就職難の深刻化は避けられないと考えられる。
中国政府は雇用の悪化を食い止めるために、企業に採用を増やすよう圧力をかけたが、実質的な効果は見込めない。雇用・所得環境の悪化により、デフレ圧力は高まり、個人消費、企業の設備投資の減少も避けられないだろう。