世帯所得や資産による直接の影響はほどんどない

筆者は、世帯年収と世帯金融資産と幸福度の関係も分析しているが、世帯所得については年収1200万円までは少し幸福度を押し上げる効果があるが、その効果はあまり大きくはない。同様に世帯金融資産も多い方が幸福度を高めるようだが、その効果もあまり大きくはない。

学歴も高くなれば、幸福度は上昇するが、その効果もあまり大きくはない。学歴を高めることは、幸福度を直接押し上げるわけでは無く、所得を上げ結婚するチャンスを増やすことに繋がることで、幸福度を押し上げている、という間接的な効果があると解釈したほうが良さそうだ。

学歴と資産のイメージモデル
写真=iStock.com/smolaw11
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また、日本は格差社会だと思う、自分は下流だと思う、収入や社会的地位などの劣等感を感じる、といった項目は幸福度をかなり下げるが、学歴や所得はそうした傾向を抑制する効果もあるようだ。

ここまでの結果を見ると、勉強して大学に行き、きちんと就職して、結婚して子どもと暮らす、という昭和な価値観は意外と幸福の土台になっている可能性を示唆している。

「地域と住まい」は「子ども」以上に幸福度への影響が大きい

住みここちランキングでは、住んでいる地域への満足度と住んでいる住まいの満足度、持ち家か賃貸かといった項目も調査している。

幸福度と地域への満足度と住まいの満足度の関係を調べてみると、意外に影響が大きいことがわかっている。

地域への満足度が高いことは、子どもがいること以上に幸福度に影響があり、住まいへの満足度が高いことはそれ以上に幸福度のプラスに働く。つまり、気に入った場所の気に入った住まいに住むことは幸福度を押し上げる効果があり、住む場所と住まいを選択できる人のほうが、幸福度が高い傾向にある、ということになる。

なお、持ち家に住んでいることは、幸福度に対して多少プラスに働くが、賃貸と比べてその効果は大きいとは言えない。

街の幸福度ランキングでは、上位の街に共通点がないように見えたが、移住者が多い街、ニュータウンや新興住宅地、というのは、新たに家を購入できるだけの一定以上の所得がある結婚していて子どもがいる家族が、未来が明るいと思いながら住む場所を能動的に選択し、気持ち良く住んでいる、つまりもともと幸福度が高くなるような背景のある人たちが多い街、ということになる。

もちろん、だれでも住む場所や住まいを変えれば、幸福度が必ず上がる、というわけではないが、それでも、住んでいる場所と住まいを気に入っていることが、幸福度を高める可能性がある、というのは大きな発見だろう。

なお、分析結果の詳細については、「街の住みここちランキング2023」の特設サイトの解説にある「住みここちランキング2022総評レポート」を参照いただきたい。

こうした新しい視点に気づき、自分の街と住まいを見つめ直してみるのもいいだろう。

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