世の中には幸福になる方法論があふれている
ネットで「幸せになる方法」と検索すると、「20の行動」とか「10の習慣」といったノウハウ記事がたくさん出てくる。なかには「たった一つのこと」で幸せになれると主張するものもある。
こうした記事のほとんどは、行動や思考といった個々人の意思で変えられるものを中心に解説しているが、幸福度の男女差や、年齢や家族構成による違い、職業や所得、財産による差などの影響をきちんと解説してあるものはほとんどない。
所得と幸福度の関係については、800万円から1000万円程度までは所得に応じて幸福度が上昇するが、それ以上の所得上昇は幸福度とは関係が無くなるといった研究もある。
日本での幸福度に関する研究の代表は、大阪大学の大竹文雄教授らによって2010年に出版された『日本の幸福度』(日本評論社)だろう。この研究では、性別や年齢、学歴や職業、所得といった個人属性が幸福度とどのような関係にあるかが詳しく解説されているが、住む場所や住んでいる住宅と幸福度がどのような関係にあるか、という点については掘り下げた分析は行われていない。
筆者が大東建託賃貸未来研究所で企画した「住みここちランキング」は2019年に調査を開始した。今では全国版を含めて47都道府県すべてについて、「街の住みここちランキング」「住みたい街ランキング」「住み続けたい街ランキング」を発表しており、さらにその場所に住んでいる人たちの主観的幸福度の平均値を集計した「街の幸福度ランキング」も発表している。
本稿では、幸せな人が多く住んでいる街はどこで、なぜそうなるのかを解説してみたい。
街の幸福度ランキング1位は「長野県原村」
2023年版の「街の幸福度ランキング(全国版)」は、12月20日に発表された。その上位20位までは図表1の通りである。
この幸福度ランキングは、街の住みここちランキング調査に含まれている「あなたは今幸せですか?」という設問に対して、最も幸せな場合を10、最も不幸せな場合を1とした10段階評価で得た回答を単純に住んでいる市区町村ごとに平均を取ったものである(ただし統計的な誤差を小さくするために回答者50名以上の市区町村をランキングの対象としている)。
1位は長野県原村、2位は大阪府豊能町、3位は徳島県板野町となっており、上位20位まで全国区の知名度があるのは、10位の神奈川県葉山町と18位の大阪府箕面市、20位の東京都中央区くらいで、知らない街ばかり、というのが一般的な印象だろう。