上位の街に共通点があるわけではない

しかも上位の街に共通点があるわけではない。

移住者の多い街、という意味では、1位の長野県原村、8位の北海道東川町、10位の神奈川県葉山町といったところがあり、ニュータウンや新興住宅地という意味では、2位の大阪府豊能町、7位の北海道東神楽町、11位の埼玉県鳩山町、19位の福岡県新宮町といった街もある。

図表1の一番右の順位2というのは、生活利便性や交通利便性などが反映された街の住みここちランキングの順位で、住みここちランキングで上位の街の幸福度が高いというわけでもない。

このように、街の幸福度ランキングは全体として共通点があるわけではない。では、幸福度とはどのような構造なのだろうか。

「結婚していること」「子どもがいること」で幸福度が上がる

最近では、どのような意図なのかわからないが、子どもがいる人ほど幸福度が低い、と主張する分析もあるようだ。そのような分析では、幸福度と言いながら、実は生活満足度と子どもの有無の関係を分析していたりする。

幸福度と生活満足度は、違う概念であり、子どもがいることによって経済的・心理的負担が大きいため生活満足度が下がることはあっても、それをもって幸福度が下がる、というのは少し乱暴な議論だろう。

実際、前述の『日本の幸福度』では、「子どもは結婚生活の幸福の程度をいくぶん下げるかもしれないが、他方で離婚を防止するという効果もある(Glenn and McLanahan[1982])」という先行研究を紹介しており、「幸福度では子どもの数はプラスで有意、生活満足度ではマイナスで有意」という分析結果も示されている。

筆者が住みここちランキングの18万人分の個票データを使って、主観的幸福度を目的変数とし年齢、性別、婚姻状態、子どもの有無、世態年収といった個人属性と、居住地域・住まいへの満足度および未来は明るい、家族関係は良好だといった条件を説明変数にした重回帰分析でも同様の結果が出ている。

この分析では、子どもがいること、結婚していることが幸福度を押し上げる効果があることがわかっており、その効果は、結婚していることの効果のほうが、子どもがいることの効果よりも大きい。

自然の中で手をつないで歩く親子
写真=iStock.com/TATSUSHI TAKADA
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