住まいのデザイン性と機能は両立するのか。ある女性建築家は、日当たりのいい南面に設置した大きな掃き出し窓により「リビングが真夏のビニールハウスに変化し住み続けられない」とかつての施主からクレームを受けることがあった。このようにデザインとしての窓が思わぬクレームを誘発した例は、ここ数10年枚挙にいとまがないという。編集者の藤山和久さんが書いた『建築家は住まいの何を設計しているのか』より紹介しよう――。

※本稿は、藤山和久『建築家は住まいの何を設計しているのか』(筑摩書房)の一部を再編集したものです。

大きい窓とテーブルがある部屋
写真=iStock.com/Satoshi-K
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ほぼすべての家の南面に掃き出し窓がある

掃き出し窓と呼ばれる窓がある。

あなたの家にもあると思う。庭やバルコニーとの境にある大きな引き違いの窓、あれが掃き出し窓だ。室内のゴミやホコリをそこから「掃き出した」のが語源といわれる。昔は現在の地窓のように高さの低いものをいったが、いつのまにか背丈を上まわる高さのものも掃き出し窓と呼ぶようになった。

西洋の住宅にも掃き出し窓はある。だが日本のように、どこの家でもあたりまえのように設けられてはいない。そこには気候風土にともなう建築構法の違いなどが大きく関係しているのだが、話が長くなるのでここでは割愛する。

掃き出し窓の特徴は、「建物の南面に設けられる」ということだ。むろん例外はあるが、戸建住宅の掃き出し窓といえば一般的には南面の窓ということになる。

近所の住宅地をぶらっとひと回りしてみた。

やはり、ほぼすべての家の南面に掃き出し窓がついていた。幅1800ミリ前後のものを2つ、間に壁を挟んで設けている家が多い。掃き出し窓の向こうは、おそらくリビング・ダイニングだろう。

「おそらく」というのは、すべての窓が昼間にもかかわらずカーテンを閉めているからだ。それも厚手のドレープカーテンである。せっかく南面に大きな窓を設けているのに、これでは明るい光も気持ちのよい風も入ってこない。

いや、無理もない。なにしろカーテンを閉め切っている家は、目の前が人やクルマの行きかう道路なのだ。私のような不審者に家の中を覗き込まれても困る。

「せめてレースのカーテンにすれば、外からの光だけでも入って室内が明るくなるのでは?」と余計なお世話を言いたくなるが、そのような隙を見せている家は1軒もなかった。なかにはカーテンだけでは手ぬるいとばかりに、雨戸をぴしゃっと閉じている家もあった。