「ところが20年5月、賭けマージャン問題が浮上したことで、黒川氏は東京高検検事長を辞任。そして翌6月、前年まで法務大臣を務めていた河井克行氏が東京地検特捜部によって公職選挙法違反の容疑で逮捕されたのです。さらに9月に持病の再発を理由に安倍氏が首相を辞任したことで、特捜部の動きが活発になったようにみえます。時系列でみると、桜を見る会の問題と黒川氏の辞任がターニングポイントになった感があり、やはり安倍政権と検察の間ではさまざまな“駆け引き”があったのではないかと思わざるを得ません」(前出の週刊誌記者)
パーティー券問題の捜査は「まだ始まったばかり」
実際、政権の意向が捜査に影響を及ぼすことはあるのだろうか。
東京地検特捜部副部長を務めた弁護士の若狭勝氏は、「東京地検特捜部に所属する検察官が政治の“圧力”を感じることはまずありません」と前置きしたうえで、こう話す。
「一方で、安倍さんが首相だったときは現職の与党議員に対する捜査や立件は、かなりのハードルとなって立ちはだかっていたでしょう。ただこれは特捜部という現場レベルの問題ではなく、もっと上、検察上層部の話です。そして安倍さんが首相を辞任してからの推移をみると、特捜部が相次いで現職の国会議員を立件していることは、(安倍氏の辞任と)無関係とは言えないと思います」
04年に起きた日歯連事件で、若狭氏は特捜部の主任検事として捜査を行った。この事件では日本歯科医師連盟の幹部だけでなく、元職を含む自民党の国会議員2人が逮捕、在宅起訴されている。
「私も金の動きを徹底的に追い、自民党幹事長の政策活動費のお金の流れまで調べました。日歯連事件に比べれば、パーティー券問題の捜査は、まだまだ始まったばかりだと言えます。ただ、全国から応援検事が集まっていると報じられていますし、これから検察が本腰を入れるのかどうかが注目されます」(若狭氏)
政権の“足かせ”が外れた特捜部が政界の「膿」を出してくれることを期待したい。
(井荻稔)