21年1月には鶏卵汚職事件で、吉川貴盛氏を収賄罪で在宅起訴。農水大臣在任中に鶏卵生産会社から現金500万円を受け取ったという容疑だった。同年6月には公選法(寄付の禁止)違反で元経済産業大臣の菅原一秀氏を略式起訴し、12月には貸金業法違反(無登録営業)で元財務副大臣の遠山清彦氏を在宅起訴。3人とも有罪が確定している。

22年12月には政治資金規正法違反(不記載・虚偽記載)で元外務副大臣の薗浦健太郎氏を略式起訴。今年9月には政府の洋上風力発電事業をめぐる汚職事件で、秋本真利容疑者を受託収賄の疑いで逮捕した。8人のうち、秋本容疑者が唯一、現職の国会議員だ。

「特捜部の捜査で注目されるのはパー券問題だけではありません。今年4月に行われた東京・江東区の区長選で、前区長の公職選挙法違反事件が起きました。特捜部は関連の捜査として、前区長を支援したとされる柿沢未途前法務副大臣の地元事務所などを11月に家宅捜索しています。柿沢氏を特捜部が逮捕するのか否か、多くの国民が注視しています」(同)

「転換点」となった黒川弘務氏の辞任

こうして特捜部の“実績”を振り返ってみると、19年12月に秋元被告を逮捕してから、まるでせきを切ったように次々と国会議員をターゲットにしているようだ。

19年12月が“転換点”だったようにもみえるが、この時期の政界はどんな状況だったのだろうか。

「19年は故・安倍晋三氏が首相を務めていましたが、政権は『桜を見る会問題』で大揺れでした。高級ホテルで行われる前夜祭の会費が不当に安かったり、招待者名簿が破棄されたりするなど不審な点が次々と明るみに出ました。安倍氏の関連政治団体に前夜祭に関する収支は記載がなかったことから、政治資金規正法違反にあたるのか、国会で激しい論戦となりました」(社会部記者)

そして、検事総長の人事をめぐってもひと悶着あった。20年1月31日、政府は東京高検検事長だった黒川弘務氏の定年を6カ月延長する閣議決定を行った。黒川氏は安倍氏と近しいとされ「官邸の守護神」と呼ぶ関係者も少なくなかった。この定年延長は、黒川氏を検事総長にするために政府が強引に進めようとしているとの批判が上がった。