子どもに性加害を繰り返す加害者には、どのような特徴があるのか。小児性犯罪の当事者に特化した治療に携わっている精神保健福祉士・社会福祉士の斉藤章佳さんは「よく『あやしい人についていったらダメ』と言うが、加害者には『教育熱心な教師』や『親しみやすい好青年』も少なくない。彼らは『グルーミング』と呼ばれる手法を用いて子どもに親近感を持たせ、徐々に性的な行為に及んでいく」という――。(第1回)
※本稿は、斉藤章佳『子どもへの性加害 性的グルーミングとは何か』(幻冬舎新書)の一部を再編集したものです。
加害者は「普通の人」
「知らない人についていったらダメ」
「あやしい人に声をかけられても絶対に話さないようにね」
「人気のない場所には行かないでね!」
子どもの身を案じて、このような言葉をお子さんにかける親御さんはとても多いと思います。
しかし、本当に、気をつけるべき人は「あやしい人」なのでしょうか。
私が所属する榎本クリニック(東京都豊島区)では、小児性愛障害と診断され、子どもへの性加害をしたことのある人に特化した治療グループ(SPG:Sexual addiction Pedophilia Group-meeting)を2018年に始めました。2023年8月時点で、小児性犯罪を起こした加害者200人以上が受診しています。
彼らのなかには、教員をはじめとする学校の職員、塾講師、トレーナー、保育士、ベビーシッターなど、子どもに日常的に関わる職業に就いていた人も少なくありません。また、このような職業ではなくても、近所の人にはにこやかに挨拶し、「勤勉で真面目なお父さん」「親しみやすい好青年」などのいい印象を持たれていた人も多くいます。
小児性犯罪というと、かつて世間を震撼させた宮﨑勤の幼女連続殺人事件を連想する人も多いと思います。そして、そのような事件を起こす加害者は、見るからにあやしくてオタクで不潔、「非モテ」や「陰キャ」といわれるコミュニケーションが苦手な人たちと考える人もいるのではないでしょうか。もしくは、公共の場で刃物を振り回し、子どもたちに襲いかかる「ヤバい人」を思い浮かべるでしょうか。
しかし実際の小児性犯罪者は、まったくといっていいほど様子が異なります。