「グルーミング」で子どもを手なずける

彼らのなかには、物腰が柔らかくスマートな人物も多く、とても紳士的に性的意図を隠しながら子どもたちにアプローチします。年齢のわりに童顔で細身、子どもから見ると「やさしそうなお兄さん」に見える人も少なくありません。いってしまえば、小児性犯罪者はどこにでもいるごく「普通の人」なのです。

彼らは、子どもたちを物色し、ターゲットを見定めると言葉巧みに誘い、根気強くコミュニケーションを重ね、信頼関係を築いたうえで卑劣な性加害に及びます。この性的な行為を目的に、子どもを手なずけることを「グルーミング」と呼びます。グルーミングは、見ず知らずの相手を狙う痴漢や盗撮などの性犯罪とは大きく違います。

グルーミング(grooming)はもともと、「動物の毛づくろい」という意味の英語からきています。猫が自分の体をなめて毛づくろいをする姿は、とてもかわいらしいですが、これが性犯罪の文脈では、様相はガラリと変わります。子どもと親しくなり、信頼関係を築き、その信頼を巧みに利用して子どもに性的な接触をするグルーミングという用語は、1980年代後半、アメリカの研究者から徐々に広まっていったといわれています。

オンライン上での接触は危険性が高い

グルーミングは、次の3つのパターンに分類できます。

①オンライン上でのグルーミング
②面識のある間柄でのグルーミング
③面識のない間柄でのグルーミング

なかでも近年は、①のオンライングルーミングについて心配される親御さんも増えていると思います。SNSが急速に発達し、小学校低学年の子どもたちでもスマートフォンやタブレットに触れる機会が増えました。NTTドコモ モバイル社会研究所の調べでは、小学校高学年のスマホ所有率は37%、中学生だと76%にものぼります。中学2年生になると8割を超え、小学校高学年・中学生では女子のほうが10%ほど高いようです。

いまや子どもたちにとってもスマホは体の一部であり、電話やLINEなどによるコミュニケーション手段だけでなく、ちょっとした買い物や電車に乗るときの決済手段として、また親にとっては子どもがどこにいるのか位置情報を把握するためにも欠かせないツールです。子どものスマホ所有率は今後も増え続けるでしょう。

スマートフォンを見ている子ども
写真=iStock.com/show999
※写真はイメージです

2023年7月の刑法改正で面会要求等罪、いわゆる「グルーミング罪」が新設されたこともあり、グルーミングという言葉自体も新聞やニュースの報道で耳にする機会が増えたかと思います。

この法律ができたことで、16歳未満の子どもに対し、わいせつ目的で騙したり誘惑したりして実際に会うことを要求する、お金を渡すと約束して会うことを求めるといった場合も罪に問えるようになりました。また、オンライン上でのグルーミングや、性的な画像や動画を送るように求めた場合も処罰の対象になりました。