固くなった筋肉を無理に伸ばしたり、伸ばしたまま静止させたりすると、筋肉に大きな負荷がかかります。筋線維が傷ついてしまい、修復する際にさらに固くなるからです。
そもそも、なぜ、人の体は固くなってしまうのでしょうか? 筋肉をずっと動かさずにいたり、逆に負荷をかけすぎたりすると、筋肉が縮みっぱなしの状態になってそのまま伸縮性を失います。
ストレスや脳の疲労、栄養不足や睡眠不足などでも筋肉は固くなります。こうして柔軟性が低下してこわばった筋肉が、関節の動きを制限してしまいます。これが、いわゆる「体が固い人」の状態です。
柔らかな体を手に入れるためには、固くなった筋肉をゆるめ、関節の可動域を広げることが大切です。
筋肉のやわらかさと猫背の関係
「猫背」を例に説明します。
猫背は背中が丸まり、肩が内側に入ってしまっている状態です。これを改善しようと、多くの人は、肩甲骨をグーっと寄せて、力ずくで胸を張るようなストレッチをします。丸まっているのを逆方向に伸ばすような動作ですね。
でも、残念ながらこれで猫背は治りません。猫背も、筋肉が固くなることで引き起こされているからです。
大胸筋という胸の筋肉が固くなって縮まると、腕の骨が内側に引っ張られます。腕は内側にねじれるので、巻き肩になります。固くなった胸や腕の筋肉は、背中の筋肉を前に引っ張ります。すると、背中の筋肉はどんどん前に引っ張られながら固くなっていきます。
筋肉が固くなると、周囲の骨が筋肉に引っ張られてしまいます。骨は本来の位置に戻れなくなります。これが、猫背の状態です。
筋肉が固まった状態でどんなにストレッチをして筋肉を寄せても、骨が正しいポジションに戻ってくれることはありません。筋肉が固くなることで、関節の可動域が狭くなっているからです。
巻き肩や猫背を改善するには、胸や背中の筋肉をゆるめることが必要です。筋肉をゆるめることで、肩甲骨の可動域が広がって肩が開くようになります。がんばって時間を作って、わざわざストレッチをするよりも、歩きながら全身の筋肉を動かしたり、座りながら小まめに筋肉を動かしたりするほうが、効果的にゆるめることができます。結果、可動域も広がります。
10秒で筋肉がゆるむ「腕上げウォーク」をやってみてほしい
それでは、さっそく背中をゆるめていきましょう。デスク作業やスマホ操作などの合間に、10秒だけ、背中をゆるめることを考えてください。この10秒が、とても効果的なのです。
固くなった背中をゆるめるには、激しく大きな動作ではなく、小刻みで小さな動作が必要です。筋肉は、「ゆらす」、「細かく動かす」、「緊張させて解放させる」などの動作でゆるめることができます。