トンネルに関してイスラエル軍の使用が予想されるもうひとつの手法が、催涙ガスの使用だ。アルジャジーラはこの戦略について、ハマスの戦闘員をトンネルから地上に引きずりだし、強制的に地上戦へと切り替えるうえで有効だと論じている。

ひとたび地上戦となれば、イスラエルは技術的にも兵器的にも優位だ。国際的な反発を招きかねない致死性のガスが使用される可能性は低いが、一方で催涙ガスは、特にハマスの戦闘員が防護具を備えていない可能性が高いことを考えれば、高い効果が期待されるという。

ガザ地区の「地下迷宮」に、人質が捕らわれている

このようにイスラエル軍はさまざまな戦略を取り得るが、ガザの広大で複雑なトンネル網という難敵は、依然として手強い。最大500kmに及び、都市の随所に隠された入り口の数は数万に上るともいわれる、広大なネットワークがガザには潜む。アルジャジーラは、まずはトンネルの個々の位置を把握することが第一歩になるだろうとみる。

テレグラフ紙によると、軍事衝突が始まって1カ月が経過した11月初旬の時点で、イスラエル軍が破壊に成功したトンネルの入り口はわずか130カ所だ。物量では有意なはずのイスラエル軍が、癖のある地理的特性に手を焼いている現状を物語る。

都市の地下に広がる迷路のような要塞に、今もなお人質が捕らわれている。全員の無事救出が望まれるが、軍事衝突の泥沼化は避けられそうにない。

手すりをつかむ女性の手とエルサレムの旧市街
写真=iStock.com/Joel Carillet
※写真はイメージです
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