病院の跡地からも入口が見つかった

この入口は、無数に存在するトンネル網へのアクセスポイントのひとつにすぎない。ガザ地区最大級の病院であり、ハマスの活動拠点のひとつではないかと疑われるアル・シファ病院の敷地内からも、トンネル網への入口とみられる階段付きの縦穴が発見された。このトンネルは、以前に発見された他のトンネルよりも際立って大きい。

CNNの報道によると、イスラエル軍は、ハマスはテロ行為のために用意した指揮統制中枢などのインフラ設備を数々の病院に隠しており、このトンネルがその事実を示唆する証拠になると考えている。

イスラエル軍は、縦穴を降りトンネル内で撮影した映像を公開している。直径2mほどの縦穴が10mほど下まで続き、内部には鉄製とみられる幅の狭い螺旋階段が設けられている。縦穴を降りきると通路は水平に切り替わり、55mほどのトンネルが続いている。その先には小さな窓のついた金属製のドアが設けられている。

ドアは防爆性能を有し、先にはハマスの重要な設備が備わるか、またはトンネル網への分岐が続くとみられている。イスラエル軍スポークスマンのダニエル・ハガリ少将は、こうした地下施設を破壊する必要があり、それがハマスへのプレッシャーになると強調した。

障壁を守るイスラエルの兵士
写真=iStock.com/Joel Carillet
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長距離射撃や精密兵器では効果がない

10月7日にハマスがイスラエル側に攻撃を仕掛けて以来、トンネル網は軍事衝突の行方を占ううえで極めて重要な位置を占めるようになった。ハマスがイスラエル軍をトンネル戦争に巻き込むことを念頭に、10月7日の攻撃を仕掛けたと見る専門家もいる。

アメリカのジャック・リード上院議員(軍事委員会委員長)は、USAトゥデイ紙に対し、ハマスはイスラエル軍との戦闘の舞台をトンネル内へともつれ込ませることで、戦闘を有利に運ぶ算段だろうとの認識を示した。トンネル戦では長距離射撃や精密兵器のようなイスラエル軍の従来の兵器が有効でなく、苦戦を強いられるおそれがある。

ガザに張り巡らされたトンネル網は、司令部を地下部分に収容したり、交通網としての役割を担ったりと多用途だ。ニューヨーク・タイムズ紙は、トンネルは単なる通路ではないと指摘する。住宅地の地下に戦略的に配置され、物資を貯蔵し、トンネル内から作戦を指揮しているという。トンネルの一部はコンクリートで補強されており、シェルター、指令室、弾薬倉庫、人質を拘束するエリアなどが存在すると詳述している。

また、民家など何の変哲もない場所に、ハマスが神出鬼没に活動するためのアクセスポイントを偽装している。南部でも、エジプトとの国境に接するラファ地区の一部ではトンネルの密度が高く、同じポイントで深さを変えて交差する複数のトンネルが存在するほどだという。