「ペットショップに並ぶミックス犬」はどこから来ているか
ペットショップに並んでいるミックス犬たちは、ほぼ金もうけが目的の「繁殖屋」から来ています。母犬たちを大切にしているシリアスブリーダーとは違い、「繁殖屋」の母犬たちは過酷すぎる生活を強いられていることが多くあります。狭いケージの中に閉じ込めたまま、質の悪い最低限の食べ物と水だけを与えられ、もちろん散歩もなく、ケージの中は糞尿まみれ。ヒート(発情期)ごとに子供を産まされ取り上げられ、栄養不足で歯や骨はぼろぼろ。6歳位になり繁殖機能が衰えるまで、ずっとその日々が続くのです。
「繁殖屋」から保護された親犬にも多々会いましたが、長く歩いた経験がないので歩けない、あるいは細長い場所で暮らしていたため前後にしか歩けない犬もいました。
ミックス犬は雑種だから強いという売り文句もあります。もちろん健康な犬たちもたくさんいますが、純血種の掛け合わせは両方の遺伝子疾患がダブルで出る可能性があるということを忘れてはいけません。性格も犬種特有の性格がミックスされるので読めない部分があり、ドッグトレーナーさんに駆け込む飼い主さんも多いようです。
ペットショップでの犬の売れ時は、生後2カ月半から3カ月半位。犬の15年くらいの生涯の中で、たった1カ月です。いろんな種類のたくさんの仔犬たちが、常に店頭に並んでは消えていく。このこと自体がおかしいと気づいてほしいのです。
人間のエゴを満たすために消えていく命がある
日本では、ペット産業の流通過程での死亡数が年々増える傾向にあります(「犬猫、流通中に年2.6万匹死ぬ ペットショップ・業者」朝日新聞デジタル 2020年4月1日)。保護センター等での殺処分数が年々減り続けているのとは対象的です(2015年以降は、流通過程での死亡数を殺処分数が下回っています)。産まされる親犬も、売れ残った仔犬たちも、産み終えた犬たちも、劣悪な環境で生きていることが多いです。
「欲しい時に気軽に買いたい」「流行の犬種が欲しい」「珍しい犬が欲しい」「ちっちゃい仔犬が欲しい」「同じ犬種の中でもサイズの小さい犬が欲しい」――。そんな人間のエゴを満たすために、見えないところでつらすぎる目に遭う犬たちがおり、消えていく命がたくさんあるのです。
安易な「犬種ブーム」がもたらしてきた悲しい道をもう二度と繰り返してはいけません。需要と供給が成り立つからビジネスになっているのです。もうからなくなれば自然と消えていくのです。
愛犬家のみなさんや、これから犬を飼いたいと思う人たちが、この現実を知ることからすべては始まります。