動物愛護センターに送られた過去の人気犬たち
冒頭で述べたように、日本では過去何度も、特定の犬種をめぐる悪しき「犬種ブーム」が起きました。
人気が出ると、金もうけだけが目的の自称ブリーダー(「繁殖屋」や「パピーミル」と呼ばれます)が無理な繁殖を行い、生まれた仔犬をセリ(ペットオークション)にかけます。ペットショップ等の店頭に並んだそれらの仔犬を見て「かわいい〜」と安易に買った人が、「飼い切れなくなった」といった理由で気軽に棄て、その犬種が各自治体の動物愛護センターに収容されるケースが増えていくという流れです。
過去、日本スピッツ、コリー、シェットランド・シープドッグ(シェルティ)、シベリアン・ハスキー、チワワ、トイ・プードルなど、たくさんの流行犬種がたどった道です。私が神奈川県動物保護センターに通っていたころは、柴犬が常に複数頭収容されていました。
業者が「コーイケルホンディエ」のミックス犬を作る可能性
人気犬種を棄てる理由は「こんなに大きくなるとは思わなかった」「こんなに大変だと思わなかった」「吠えると思わなかった」「引っ越すから」「旅行に行くから」などなど。信じられないくらい身勝手なもの。はやりの去った犬を捨て、新しくまたはやりの犬を迎えるなどという人もいます。気軽に買って気軽に棄てる。犬たちに罪はまったくないのです。
そして棄てられた犬たちを保護する動物保護団体さんたちは、仕事をしつつ、場合によってはご自身の生活のすべてをかけて、個人の財産や募金で集めたお金で動物たちを救い、新しい家族へつなげています。すべては善意の上に成り立っています。次から次へと犬たちが放棄されるために終わりの見えないその活動は、あまりにも大変です。
保護犬たちは新しくとてもいいご家族に巡り合い、明るく楽しく第二の人生を送っていることが多いです。前の飼い主を恨んだりする犬はほぼいません。ただいつも思うのですが、短い犬生、すべての犬たちが最初から温かい家庭で幸せに暮らせたら、どんなによかったでしょう。
そしてもう一つ、いまだからこそ特に気を付けなければならない問題があります。最近のペットショップの店頭では空前のミックス犬ブームが起きており、そうしたトレンドの中でコーイケルホンディエのミックス犬が作られる可能性が大いにあることです。
犬種を大切に護っているシリアスブリーダーたち(詳細は後述します)は、ミックス犬を作ることはありません。それでも、珍しい犬が欲しい、かわいいから欲しいとミックス犬を欲しがる人が増えると、もうけようとする繁殖業者は増えます。需要と供給が成り立ってしまっているのです。