動物保護センターで経験したこと

「ちょっとお散歩してカフェでまったりしたい」という夢をもってコーイケルホンディエを飼った場合、犬たちが若いうちは、飼い主さんがまったりする前にグッタリしてしまうことになるでしょう。私自身も20年前、犬種図鑑を調べていてコーイケルホンディエに一目ぼれし、家族に迎えることを真剣に検討したことがあります。しかし当時の自分の環境では、猟犬とともに暮らしていく自信が持てず、断念しました。

犬の写真家として仕事をする中で、ご縁があって2016年から神奈川県動物保護センター(現愛護センター)に通うようになりました。センターに収容されている保護犬、動物保護団体が保護した犬たち、新しい家族に譲渡された犬たちなど、さまざまな生い立ち・境遇の犬たちを数千頭撮影し、飼い主をはじめ犬にかかわる方々と話してきました。その中で、犬という生き物への尊敬の念と愛情は増す一方、同時に犬たちを取り巻く環境に問題点が多々あることも見てきました。

神奈川県動物愛護センターに収容された柴犬
写真=©inu*maru ©神奈川県動物愛護センター
神奈川県動物愛護センターに収容された柴犬。同センターでは犬は2013年度以来、猫は2014年度以来、殺処分ゼロが継続されている。

そんな私には、かわいい犬という報道を見て、気軽に狩猟犬コーイケルホンディエを飼いはじめた人、飼われた犬の悲劇が、ありありと思い浮かぶのです。

ライフスタイルに合った犬を選ぶことが大事

犬とお互いに楽しく幸せに暮らすには、ライフスタイルに合った犬を選ぶことがとても大事です。犬を選ぶ第一歩として、純血種であれば、もともと何の目的で作られた犬種なのか、どういう仕事をしていたのかを調べることをお勧めします。保護犬であれば、そこに生い立ちも加味されます。保護団体さんに自分が望んでいる「犬とのライフスタイル」を伝えて、合う犬を紹介してもらうのがおすすめです。

犬を飼いたいと思ったら、まずご自身が犬に割ける時間、お金、体力、知力、心のキャパシティー、住環境を考えましょう。

犬たちの寿命は年々延び、今では平均15年くらい。同じように飼い主も15歳、年を取ります。「今の自分」だけでなく「15年後の自分」のことも想像することが大事です。健やかなるときも病めるときも、体力的にサポートできるサイズの犬を選ぶこと。

犬も人と同様、年を重ねると病気にもかかりやすくなり、医療費は高額です。ペットフード協会の2022年全国犬猫飼育実態調査によると、犬の生涯の飼育にかかる費用は平均で251万7524円。体のサイズに比例して費用は増え、トリミングが必要な犬種も費用は高くなります。

「飼いたい犬」と「飼える犬」は別なのです。