マスク習慣によって生じた口呼吸による健康被害
忘れてはいけないのが、コロナ禍によるマスク習慣が、呼吸の質の低下を招いてしまったことです。マスクをしていると、鼻と口が覆われているため呼吸に負荷がかかります。そのため、気がつかないうちに浅い呼吸になってしまいます。
しかも、普段であれば、ゆったりとした深い呼吸をしてバランスをとったりしますが、マスクが口に張り付くのでこれがなかなかできません。深呼吸がはばかられるように思った人も多かったことでしょう。
マスク習慣によって呼吸が浅くなることで、鼻呼吸ではなく、口呼吸をする人が増えたことも大きな問題です。鼻呼吸によって送り込まれた空気は、脳をクールダウンさせる、車でたとえるとエンジンを冷やすラジエーターのようなはたらきがあることが知られています。肺に冷たい空気がそのまま入り込まないように、鼻の中で温度調節を行なってくれています。
また、鼻の粘膜は体の防衛システムの最前線です。鼻呼吸をしていれば、空気中に含まれる細菌やウイルスをキャッチして、きれいな空気だけを肺に送り届けることができます。
ところが、口だけで呼吸をするようになると、脳を冷却することもできません。肺に冷たい空気がそのまま流れ込みます。そして、その空気にはウイルスや細菌が含まれたままです。このように鼻呼吸は、口呼吸では得られない大きな健康メリットがあります。
鼻の奥にある副鼻腔では、一酸化窒素がたくさん作られており、鼻呼吸をすると酸素と一緒に一酸化窒素も肺に運ばれます。一酸化窒素には、血管をしなやかにするはたらきがありますが、なによりも、肺のなかで血液が酸素を取り込む量を増やしてくれる作用があります。
ところが、長期的なマスク習慣によって呼吸の質が低下しました。その結果、現代人は慢性的に酸素不足に陥っていると言えるでしょう。ということは、自律神経、そして迷走神経のはたらきやバランスにも悪影響を及ぼしています。