心身の調子を整える要として「迷走神経」の存在が注目されている。順天堂大学医学部教授の小林弘幸さんは「迷走神経の働きをよくするには腸内環境を整えることが重要。そのためには腸内細菌をいつくしみ大切に育てていくことだ。脳に作用する幸せホルモン・セロトニンや快楽物質・ドーパミンも主に腸内細菌が作っています」という――。

※本稿は、小林弘幸『自律神経のなかで最も大切な迷走神経の整え方』(フォレスト出版)の一部を再編集したものです。

腸のイラストのイメージ
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腸内細菌と自律神経の「バランス」という共通点

良い腸内環境は、善玉菌、悪玉菌、日和見菌の絶妙なバランスのもとに成り立っています。それは、善玉菌2割、悪玉菌1割、日和見菌7割が理想とされています。善玉菌が悪玉菌よりも「やや優位」であることがポイントです。

自律神経のバランスでも、交感神経と副交感神経のどちらかが「やや優位」にはたらいている状態が理想だとお伝えしました。わたしたちの健康は、この「やや優位」というバランスの上で成り立っているとも言えます。

善玉菌には、「アシドフィルス菌」や「ビフィズス菌」などが代表的。これらの菌の勢力図が「やや多い」腸内環境であれば、栄養素の吸収がスムーズに行なわれ、きれいな血液が全身をめぐります。

一方、悪玉菌には、「大腸菌」のほかに「ウェルシュ菌」などが知られています。これらの菌が勢力を拡大すると、腸のなかで腐敗ふはい物質がどんどん出ている状態になります。下痢や便秘になり大腸に炎症を起こします。

では、腸内細菌を善玉菌にすべて入れ替えれば良いのではないかという話になりますが、それもまた違います。悪玉菌は、善玉菌が「やや優位」な状態ではそれほど悪さをしません。さらに、悪玉菌がまったくなくなってしまうと、今度は善玉菌の活動がにぶってしまいます。

これは社会の縮図のようなもの。働きアリの集団でたとえると、一定の割合で「働かないアリ」が存在することはよく知られています。「働かないアリ」がいるほうが、組織はしっかり機能するものです。腸のなかでも、悪玉菌がある程度存在していることで、善玉菌がしっかり活躍してくれているのでしょう。