厚労省は9月下旬、アルツハイマー病の進行を緩やかにする効果を証明したとされる新薬の製造販売を承認した。そもそもこの病にかかりにくくするにはどうしたらいいのか。脳神経科学者でお茶の水大学助教の毛内拡さんが最新の脳科学の研究結果を紹介する――。

※本稿は、中尾篤典・毛内拡(著)、ナゾロジー(協力)『ウソみたいな人体の話を大学の先生に解説してもらいました。』(秀和システム)の一部を再編集したものです。

頭部のMRI画像
写真=iStock.com/MachineHeadz
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若者はなぜアルツハイマーになりにくい?

脳も細胞からできている臓器なので、活動した後には老廃物が生じます。老廃物には様々なものがありますが、その一種がアミロイドβやタウと呼ばれているタンパク質です。これらのタンパク質が脳組織に異常に蓄積することと、認知症の間には関連があります。

アルツハイマー病の患者の脳には、これらのタンパク質が異常に蓄積しており、いわゆる老人斑と呼ばれる脳のシミを形成しています。その結果、海馬や大脳皮質がダメージを受けると、いわゆるアルツハイマー病(アルツハイマー型認知症)になり、記憶や空間認知をはじめとした認知障害が生じるのです。

近年、このアミロイドβを標的とした抗体医薬品が、アルツハイマーの特効薬かと注目を集めていますが、アミロイドβの異常蓄積は、原因ではなく単なる結果に過ぎないという説もあり未だ統一的な見解は得られていません

これらのタンパク質は決して、年寄りの脳だけで作られるわけではなく、若い脳でも作られています。

ではどうして若い人は認知症になりにくいのでしょうか。